改正建設業法に「相続」!
コロナ禍で頑張れ建設業
2020年6月28日ジョンズ・ホプキンス大学の発表によると世界の新型コロナウイルス感染者は、1000万人を超えました。死者は50万人に迫るそうです。都内でも新たな感染者は50人前後の高水準が続いています。
一方で、プロ野球やJリーグが開始されました。また、理研-富士通の開発したスパコン富岳が世界一を取り戻し、将棋の藤井聡太7段が棋聖戦に2連勝し最年少タイトルに王手をかけるなど、明るいニュースも出てきています。まさに関係者のご苦労があっての結果だと思います。
このような中で、日本行政書士会連合会とワイズ公共データシステムが25日、オンライン形式で配信した建設業セミナーを受講しました。重要な改正について説明がなされましたが、その中に「相続」が含まれていました。
今回は、建設業法の改正と相続について感じたことをお伝えしたいと思います。
目次
コロナ禍でこそ大切な建設業
建設業はもともと価格競争の影響を受けがちな産業だと思います。私もマンション管理組合の仕事をしていましたので、提出された見積価格を値切ることがあたりまえのように感じていました。
新型コロナでは、さまざまな産業が影響を受けています。「請負」と呼ばれる契約では、成果を出して初めて報酬を受け取ることができます。建設工事は「請負」契約の典型的な契約です。もともと人手不足のなかでコロナにより大きな影響を受けました。大規模なビルの工事が遅れればその後の収益計画に影響が出ますし、水漏れ補修なら待ったなしです。納期に追われる建設業はに余計に影響が深刻と思われます。
コロナ禍の中でさまざまな活動が再開されると、建設業の大切さが見直されるのではないでしょうか。発注すれば完成してくれる、建設業者はたくさんいていつでも選べる、という常識が、実は日本の建設業界が築いてきた努力のうえでこそなりたっていたことに気づかされます。私も大手ゼネコンからリフォーム会社までさまざまな方と接してきましたが、現場で働く人とそれを支える人がいてこそ工事は完成されるのです。
建設業ではありませんが、私もコロナ禍の中で冷蔵庫の補修にきていただいてうれしかったです。
コロナ後の新たな働き方やオフィスのあり方の改善が進むと、建設業の重要性も増すと思われます。
建設業法の改正は大幅だった!
このような状況の中で、日本行政書士会連合会とワイズ公共データシステムがオンライン形式で配信した建設業セミナー「業界の最新動向から建設業法改正まで」を受講しました。
業界の最新動向
まず、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に伴う建設工事等の対応の説明がなされました。
・社会基盤に係る事業者と
・国民生活のインフラに係る事業者の
事業継続が求められること、
そのためには、
・感染予防対策の徹底と
・工事一時中止等の対応が必要であること
・下請契約等の適正化
・技術者配置や講習等に関する対応
の説明がなされました
続いて建設産業の役割が説明されました。
・頻発する災害への対応が必要であること
・インフラ整備が必要であること
・人口減少を克服する建設産業になるための施策
の説明がなされました。
この最後の施策がいわゆる「担い手三法」の改正です。
やはり、台風の記憶が新しいのですが、コロナも加わるととても説得力があると感じました。
担い手三法の改正
担い手三法の改正とは、
インフラ等の品質確保とその担い手確保を実現するため、
公共工事の基本となる「品確法※1」を中心に、密接に関連する「入契法※2 」、「建設業法」も一体として改正したものです。(H26.6.4公布)
※1:公共工事の品質確保の促進に関する法律、
※2:公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律
主な内容は次のとおりです。
①建設業の働き方改革の促進
(1)工期の適正化
著しく短い工期による請負契約の締結を禁止される一方、建設業者は工程細目を明らかにします。
(2)平準化の促進
②建設現場の生産性の向上
(1)監理技術者の専任の緩和
監理技術者の職務補佐者を専任で置いた場合には、監理技術者の兼務を認めます
(2)技術検定制度の見直し
第一次検定を合格すると1or2級技士補となれます。
(3)主任技術者の配置義務の見直し
一次下請主任技術者が、二次の主任技術者が行う管理も行う合意ある場合は、二次は配置を要しない
③持続可能な事業環境の確保
(1)許可基準の見直し
建設業役員5年必要だったが、役員補助者の配置があれば経験拡大(管理職含む)と業種拡大が認められる
(2)事業承継の規定の整備
合併などで空白期間が生じていたが、事前の認可を受けることで、許可を承継することが可能に。
建設業者の死亡後30日以内に相続の認可を申請すれば、処分までは、相続人は許可を受けたものとされる
(3)災害時の対応
(4)工事現場に掲げる標識の緩和
掲示義務を元請のみとする。施工体系図必要検討
(5)施行時期
令和2年10月1日施行。検定制度は令和3年4月1日施行
経営事項審査の最近の動き
(1) 令和元年9月中央建設業審議会を踏まえた改正
レベル4と判定された者の評価が3点、レベル3が2点
(2) 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた受審の特例について
特例措置の場合でも令和2年9月30日から4か月後の、令和3年1月末を有効期限とする。
(3) 建設業許可、経営事項審査の申請手続の電子化について
電子申請システムの本運用の開始は令和4年度を想定。
また、セミナーでは質疑応答があり、今後の運用や検討にゆだねられた者もありますが、いくつか不明点が明らかにまりました。
役員を補佐する者は、肩書きは問わないという回答がありました。
相続についても改正がなされた
改正前までは、個人事業主に認められている建設業の許可は、あくまでもその個人事業主本人に認められているわけですから、個人事業主の方が死亡した場合、ご家族の方が許可をそのまま引き継ぐことはできず、後継者の方のお名前で許可を取得する必要がありました。経営業務管理責任者の要件を満たすことなどの審査があるわけです。
そこで、次のように改正されました。
改正された建設業法第十七条の三を要点だけ抜粋してみました。(正確には必ず原典をご確認ください)
建設業者が死亡した場合、相続人(相続人全員の同意により承継すべき相続人)が被相続人の営んでいた建設業を引き続き営もうとするときは、その相続人は、被相続人の死亡後三十日以内に各号に定める者に申請して、その認可を受けなければならない。(省略)
2 前項の申請をしたときは、死亡の日から通知を受ける日までは、建設業の許可は、相続人に対してしたものとみなす。
4 第一項の認可を受けた相続人は、被相続人のこの法律の規定による建設業者としての地位を承継する。
要するに、30日以内に申請すれば、空白がなくなるわけです。
法人の場合の、合併、分割や事業譲渡の場合と、同じように空白をなくす改正がなされたわけです。
ということは、承継問題が気になる経営者の方は、30日以内に申請できるように、後継者を決めておくことが重要になると思われます。その後継者候補の方に経営管理者などの要件の準備が必要です。
まずはお問合せください
建設業法の改正は多岐にわたります。なかでも、空白を埋める改正や経営業務管理責任者の要件緩和などは、建設業界の要望を反映した良い改正になっているのではと思いました。私も勉強が必要だと痛感しました。
いずれにしましても、準備が欠かせないのは同じようです。
まずはお問合せください。より良い人生のために、事業承継、相続のお手伝いをいたします。