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コロナ禍でも夏真っ盛り
相続承認と放棄を考える

2020年8月9日長崎では被爆から75年の原爆の日を迎えました。例年の1割の参列者でした。国内のコロナ感染者は1289人となり、沖縄では最多の159人となりました。
コロナ禍でも、お盆の帰省が始まり、甲子園交流試合も始まりました。全国知事会は、交付金増額を提言しました。プールや娯楽施設は予約制をとるなど、コロナ対策をして営業再開しているところも出てきています。すこしづつではありますが、withコロナの形が出てきています。

今回は、相続勉強会のテーマ、相続の「承認」と「放棄」について考えてみようと思います。

目次

相続で気になる期間は、7日、3ヶ月、4ヶ月、10ヶ月

相続で気になるのは、期間です。
いつまでに何をしなければならないのかということです。
・7日:死亡届けの提出
・3ヶ月:相続の承認、放棄または限定承認
・4ヶ月:被相続人の準確定申告
10ヶ月:相続税の申告と納付
 
そのうち、今回は特に「承認」と「放棄」を中心に考えてみたいと思います。

死亡届けとは?

死亡の事実を知った日から7日以内に死亡届けを出します。亡くなられた方の最後の住所地、本籍地または死亡地の市区町村に提出します。死亡診断書または死体検案書が必要です。火葬(埋葬)にも許可が必要ですから留意しましょう。通常は24時間経過後でなければ、行うことができませんが、感染症の場合に例外規定があります。コロナでは、24時間以内に可能ですが義務ではないということです。

承認、限定承認、放棄の熟慮期間は3ヶ月

テキストによれば、相続するか否かの選択の余地を認め、その意思表示の期間を3ヶ月にしたということです。かんたんにいうと、亡くなられた方に借金があったらそれも相続しなければならないので、選択できるようになってるわけです。

民法915条に相続の熟慮期間が規定されています。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月

「自己のために相続の開始」というのは、自分が相続人になったことを知ったことまで必要であるという判例があります。自己のためですから、相続人が複数いる場合は、それぞれ3ヶ月ということになります。
相続放棄が続けて行われた場合に、予期しない遠い親戚の相続人になってしまい、督促状が来てしまうこともあります。そこでこの規定を活用しましょう。

3ヶ月は延長できる

相続財産が複雑なときには、3ヶ月では足りない恐れがあります。この場合は、家庭裁判所において伸長してもらうことができます。「相続の承認・放棄の期間伸長審判申立書」を提出することになります。テキストには、東日本大震災の特例法(平成23年11月30日で満了)が紹介されていましたが、コロナには特例はないようです。

熟慮期間中に第二の相続が始まったら?

これを「再転相続」といいますが、第一の相続に関する承認・放棄の選択についても、第二の相続人は相続するとされています。A→B→Cと相続したときの例を考えます。
Cが第一の相続(A→B)についても、第二の相続(B→C)についても、熟慮期間内に選択できることになります。第一の相続の熟慮期間の残り期間は関係なくなります。
選択が3通りあるうえ、第一と第二の相続のどちらを先に選択してもいいとされているので、場合わけが複数あります。

相続の放棄は、家庭裁判所に申述

(相続の放棄の方式)
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

家庭裁判所への「申述書」を提出すると、家庭裁判所が受理審判をして効力が生じます。最初から相続人とならなかったものとなりますので、代襲相続も生じません。自分が放棄したために子供が相続人となってしまったら、意味がないですから当然ですね。ただ、先順位の相続人が全員放棄すると、後順位の者が相続人になります。

未成年の子の相続放棄

未成年の子の法定代理人が意思表示する場合、利益相反で無権代理とならないか注意が必要です。全てが無権代理ではなく、外形から客観的に判断されるそうです。親が二人の子のうち一人だけ放棄する場合は利益相反になるようです。一方で、親も放棄して、二人の子も放棄する場合は、代理が可能です。

限定承認とは?

(限定承認)
第九百二十二条 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。
(共同相続人の限定承認)
第九百二十三条 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。
(限定承認の方式)
第九百二十四条 相続人は、限定承認をしようとするときは、第九百十五条第一項の期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。
(限定承認をしたときの権利義務)
第九百二十五条 相続人が限定承認をしたときは、その被相続人に対して有した権利義務は、消滅しなかったものとみなす。

限定承認は家庭裁判所に申述

放棄と同じように家庭裁判所に「申述書」を提出して、受理されると効力が生じます。気をつけなければならないのは、共同相続人は全員で共同してのみ申述できることです。

相続財産の限度で債務を相続

相続財産の限度で債務を返済するわけですが、手続きは破産に類似します。「請求申出」の公告と、知れたる債権者への「債権申出」の催告をします。

財産分離とは?

限定承認と似ている制度に財産分離があります。被相続人の債権者,受遺者(第一種)または相続人の固有の債権者(第二種)の請求により,相続財産と相続人の固有財産を分離する制度 (民法 941条1項)です 。財産分離が行われると,相続債権者,受遺者は相続財産から,また固有債権者は固有財産からそれぞれ優先的に弁済を受けることになります (942条) 。家庭裁判所の審判で行われます。

単純承認とは?

単純承認は、被相続人の債務も債権も一切含めて相続することです。法定単純承認となる場合が決められています。一方で家庭裁判所に申述する方式の「単純承認」の規定は民法には見当たりませんでした。

第一款 単純承認
(単純承認の効力)
第九百二十条 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。
(法定単純承認)
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

法定単純承認の第一「相続財産の全部または一部を処分」

「処分」には、売却、贈与などの法律行為ほか、毀損などの事実行為も含まれます。
単純承認を擬制するのに「ふさわしい」処分とされています。テキストには、葬儀費用の支出が処分にあたらないとする判例が紹介されています。

法定単純承認の第二「熟慮期間の経過」

3ヶ月の熟慮期間中に、放棄も限定承認もしない場合は、自動的に単純承認となります。

法定単純承認の第三「隠匿、消費、不記載」

限定承認または相続放棄をした後に、相続財産の全部または一部を隠匿したり、消費したり、悪意で財産目録に記載しなかったときは、法定単純承認となります。悪意については、相続財産に属することを知っているほか、隠匿する意思または債権者を害する意思が必要とされています。

準確定申告(4ヶ月)と相続税の申告納付(10ヶ月)

被相続人の準確定申告は、1月1日から死亡日までの所得税の精算を4ヶ月以内に行う必要があります。
また、相続税は、10ヶ月以内に被相続人の最後の住所地の税務署に進行納付を行う必要があります。

まずはお問合せください

夏真っ盛りですが、WITHコロナが形になりつつあります。「承認」と「放棄」の概要がおわかりいただけたと思います。
いずれにしましても、不安な状況が続くなかで準備が欠かせいようです。

まずはお問合せください。より良い人生のために、相続・終活のお手伝いをいたします。

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