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猛暑の中新しいお盆の形
相続人の不存在を考える

2020年8月15日75回目の終戦の日を迎えました。天皇陛下は初めてコロナ禍に言及され、困難な状況を乗り越えることを願われました。また、本日浜松市で日本最高タイの41.1℃を記録し、日本列島を猛暑が襲っています。

一方で、お盆は、新たな形を見せ始め、テレビ電話お墓参り・代行や法要の動画配信、などが見られました。

この時期は、戦没者の冥福を祈り、祖先を供養し、帰省して孫の顔を見せるということが日本各地で行われる時期で、コロナ禍でも大切に残していきたいものです。

今回は、高齢者の一人暮らしが増える中で、「相続人の不存在」について考えてみようと思います。

目次

相続人不存在とは

民法で規定されている相続人不存在について、どのような場合かをみていきたいと思います。
相続人がいれば、相続財産が被相続人から相続人に移転することになりますが、相続人がいない場合には、ほんとうにいないのかを確定させたり、その相続財産を処分したり、そこから債務を返済したり、だれかが実行しなければならず、しかも誰もが納得できる手続きが必要になってきます。そこで、この「相続人不存在」の制度が用意されています。

行方不明の場合は?

戸籍上相続人がいることがわかっていて、その相続人が行方不明の場合は、この「相続人不存在」ではありません。
前回のブログに書きましたように、相続人の方には、承認、限定承認、放棄の相続手続きをしていただきたいのですが、行方不明では相続放棄もできません。
この場合には、「不在者の財産管理制度」と「失踪宣告制度」で処理されます。こちらは、民法総則の制度ですから、一般的な制度になります。

たとえば、相続人の一人が行方不明だと、遺産分割協議書が作れないことになります。そこで、家庭裁判所に「不在者財産管理人選任審判申立書」を提出することになります。「相続財産管理人」はこの制度を準用しています。この、不在者財産管理人がいれば、遺産分割協議書が作成できます。
また、失踪から7年を経過していれば、「失踪宣告審判申立書」を家庭裁判所に提出します。
失踪宣告が確定すると、失踪期間満了の時に死亡したものとみなされます。

包括受遺者がいる場合は?

相続人はいないが、包括受遺者がいる場合は、この「相続人不存在」制度は適用されないとされています。包括受遺者とは、相続財産の全部または一定割合の遺贈を受ける者です。相続人と同一の権利義務を有することとされてますので、この制度は不要だと言うことになります。

相続人不存在とは?

行方不明もなく、包括受遺者もいず、相続人が一人もいない場合か、相続人全員が放棄した場合が考えられます。

民法951、952,953条以下に相続人不存在が規定されています。
(相続財産法人の成立)
第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
(相続財産の管理人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。
(不在者の財産の管理人に関する規定の準用)
第九百五十三条 第二十七条から第二十九条までの規定は、前条第一項の相続財産の管理人(以下この章において単に「相続財産の管理人」という。)について準用する。

相続財産法人と相続財産管理人

その名のとおり、相続財産が法人となります。
相続人のあることが明らかでないときに、法律上当然に生じるとされています。とても面白い制度ですね。同じ法人でも、会社設立には定款や資本金、登記が必要なのと比べると、全く異なります。

一方でこの財産を管理するのが、相続財産管理人ですが、こちらは家庭裁判所への選任の申し立てが必要になります。「相続財産管理人選任審判申立書」
この申し立てができるのは、利害関係人または検察官です。
相続人がいない相続財産から、債務の弁済を受けたい人は、利害関係人として、この申し立てができます。なお、この時に家庭裁判所に「予納金」を納めさせられるようです。公告費用や管理人報酬が必要となるからのようです。
相続財産管理人は、相続財産法人の法定代理人となります。会社なら社長ですね。決してマンションや寮の管理人などと混同してはいけません。

相続人不存在の確定と財産の清算

相続人がいないということで、相続財産法人が生まれ、相続財産管理人が選任されたあとの手続きをみてみましょう。

まずは、選任の公告

家庭裁判所が、相続財産管理人を選任したあとに、公告を行います。
「管理人を選任したよ」ということを公にするわけです。
実質的には、相続人がいるならでてきなさいと公告してるわけです。債権者もこれをみて一安心でしょうか。

次に、請求申し出の公告

相続財産管理人は、選任の公告から2ヶ月間に相続人が現れない場合は、全ての相続債権者と受遺者に対して、2ヶ月をくだらない期間を定めて、債権の申し出の公告を行います。債権者は自分で名乗り出なさいと言うことになります。

清算の開始

この請求申し出の期間が満了すると清算が開始されます。公告で名乗り出た債権者やもとからわっていた債権者に相続財産から債務を支払うわけです。相続財産管理人のお仕事になります。

最後の相続人捜索公告

公告期間に相続人があらわれず、清算してもなお残余財産がある場合は、6ヶ月をくだらない期間を定めて、最後の相続人捜索公告を行います。この期間満了で、相続人不存在が確定します。これまでやってきてまだ確定じゃあなかったというのが驚きですね。

失権

相続人不存在が確定すると、相続財産管理人にしれなかった債権者・受遺者や相続人は失権します。あとから出てきた債権者や相続人はもう遅いということです。ただし、賃借権や地上権などのように、相続財産管理人が支払うことのできない権利は消滅しない扱いとなります。

相続財産法人の清算

配当弁済の順位は、優先権ある債権者→債権者→受遺者の順となります。優先権の対抗要件は相続開始時までとする判例があるようですので、注意が必要ですね。

特別縁故者と国庫帰属

相続人不存在が確定したあとに残余財産がある場合は、特別縁故者への分与か、国庫帰属となります。

特別縁故者とは?

(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第九百五十八条の三 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。

縁故があった者というと漠然としていますが、ここでは、生計を同じくしていた者(内縁の妻などが典型的でしょう)、療養看護に努めた者というように内容が具体的です。相続人ではないけど、相続財産をもらう資格がある人になります。遺言を書くことが少ない日本の事情を反映しているようです。
最後の相続人の捜索公告が満了したあとの3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てをしなければなりません。「特別縁故者に対する相続財産分与審判申立書」これは、申し出の公告のような制度にはなってないようですから、自分で注意をしておく必要があります。
最近は、地方公共団体が、生活保護の生活費や医療費の支出を、特別縁故者として認められる傾向があるようです。国にもっていかれると困るということでしょうか。

国庫帰属の手続き

(残余財産の国庫への帰属)
第九百五十九条 前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。

さらに特別縁故者に分与しても残った残余財産があれば、国庫に帰属します。相続財産管理人の管理計算を経たうえで、国庫に引き継がれることになります。

まずはお問合せください

猛暑の中で新しいコロナ時代のお盆が現れています。その中で「相続人の不存在」という制度の概要がおわかりいただけたと思います。結構時間がかかります。特別縁故者の方は、遺言をかいてもらうほうがいいですね。
いずれにしましても、不安な状況が続くなかで準備が欠かせないようです。

まずはお問合せください。より良い人生のために、相続・終活のお手伝いをいたします。

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