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平均寿命は過去最高
相続財産の包括承継を考える

2020年7月31日厚労省は令和元年簡易生命表を発表しました。女性が87.45才、男性が81.41才でいずれも過去最高でした。また8月21日行われた新型コロナウイルス対策の分科会は、全国的には感染拡大はピークに達したと考えられるが、再び増加のおそれがあり引き続き注意が必要だと指摘しました。

ほんとうにピークだったらいいですね。コロナは平均寿命に影響があるかもしれませんが、日本の高齢化問題は深刻化しています。老老介護というのは知っていましたが、最近は認認介護(軽度の認知症の人同士の介護)というのが問題だそうです。

今回は、相続にまつわる問題の中で、「相続財産の包括承継」について考えてみようと思います。

目次

相続財産の包括承継とは

相続とは、人の死亡による財産上の権利義務の包括承継であると言われます。
以前の民法では、家督相続と財産相続がありましたが、戦後の民法では、財産相続だけになっています。相続という漠然とした概念も、実は財産の移転であることになります。よく、「家を継ぐ」という言葉がありますが、この言葉には相続という法規定には当てはまらない要素が含まれています。

原則と例外

民法の規定をみてみましょう。
(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
つまり、「一切の権利義務」を承継するのが原則で、例外は「一身専属権」と言うことになります。
よく言われるのが、相続は借金も含めて相続するから気をつけなければならないということですが、そうはいっても相続になじまないものもあるということです。簡単にいえば、その人だから成り立っていたのにその相続人にはなりたたない権利義務の関係です。

一身専属権の明文規定があるもの

相続されないことが明文で規定されているものがあります。
<代理権>
第百十一条 代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
一 本人の死亡

<使用貸借における借主の地位>
第五百九十七条(略)
3 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。

<雇用契約上の地位>
第六百二十五条 使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない。
<組合員の地位>
第六百七十九条 前条の場合のほか、組合員は、次に掲げる事由によって脱退する。
一 死亡
<配偶者居住権>1036条(597条3項準用)
<配偶者短期居住権>1041条(597条3項準用)

一身専属権で明文規定がないもの

テキストによれば、
婚姻費用の分担請求権、扶養請求権、生活保護受給権、が「相続しない」ことはほぼ異論がないそうです。
離婚の際の財産分与請求権については、意見が分かれるようです。
これらも一定額の給付請求権として具体化したあとは、相続を認めることになるようです。

保証債務の相続

保証債務は一身専属権ではなく、保証人の死亡により相続人が相続します。連帯保証も同様です。
根保証は、債務額が確定しない形の保証ですが、死亡により元本が確定します。
死亡した父親が長男の住宅ローンの保証人になっていたために、次男・三男のところに督促状が舞い込むこともありうるわけです。熟慮期間中の相続の放棄か限定承認以外には避けられないようです。

死後事務委任契約の効力

委任者が死亡すると委任契約が終了します。(653条1項)
死後事務委任契約は、自分(委任者)の死後の事務(葬儀など)を委任する契約であり、判例は有効であるとしています。
相続人がいる場合は、委任者の地位を相続することになりますので、相続人への報告や解除制限などを盛り込む必要があります。

相続による地位の併存

これは民法を勉強すると必ず出てくる問題です。無権代理人が本人の地位を相続した場合にどうなるかという問題として出されます。

息子Aが勝手に父Xの土地を売ったあと、相続したら、売買を追認拒絶できるか
という問題です。

共同相続人B,Cがいる場合を考えると、B,Cが追認を拒絶できるのは当然として、AはXの地位を相続していても、信義則上追認拒絶できないと考えられているようです。

ほかにも逆のパターンなどがありますが、省略します。
昔に比べて判例が進歩して、合理的な結論が出されるようになっていると思います。

受取人固有の権利

一見すると相続財産に含まれるようですが、受取人固有の財産とされるものがあります。

生命保険金請求権

・受取人が特定
 特定されている場合は、その人が相続人であっても、相続財産に含まれないとされています。保険契約から生じる権利というわけです。

・受取人が「相続人」
 特定されていませんが、これも相続財産に含まれないとされます。

・受取人が「自分」(被保険者)
 この場合だけ相続財産となります。

死亡退職金

死亡退職金は、就業規則などのその会社の支給規定に根拠があるため、相続財産ではないとされています。
遺族年金も同様です。

香典

喪主に対する贈与であり、相続財産ではありません。

祭祀など

祭祀財産などは異なる取扱になります

祭祀財産の扱い

(祭祀に関する権利の承継)
第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

この規定は家督相続時代の名残だそうです。
あくまでも相続財産とは異なる取扱にして、主宰者に承継させるというだけのようです。主宰者に承継させないことも、被相続人の自由です。

祭祀主宰者

法律で認められた祭祀主宰者の決定方法は、
被相続人の指定、慣習、家庭裁判所の審判ですが、
当事者の協議でも決定できます。
注意すべきは、「明治民法下の家制度に基づく慣習」は含まないことです。
ちょっと不思議な感じを受けますが、わざわざ家督制度を廃止したわけですから、当然といえば当然かもしれません。

遺体・遺骨

遺体・遺骨の所有権が遺族間で問題となることがあります。
喪主か祭祀主宰者かという議論があるようですが、
慣習上の祭祀主宰者に帰属するという判例が紹介されています。
脳死における臓器移植では、家族に同意が求められることがあり、「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針があります。

まずはお問合せください

日本人の平均寿命が延びました。老老介護に加え、認認介護も増えつつあります。その中で「相続財産の包括承継」の概要がおわかりいただけたと思います。生命保険などは勘違いしそうですね。
いずれにしましても、不安な状況が続くなかで準備が欠かせないようです。

まずはお問合せください。より良い人生のために、相続・終活のお手伝いをいたします。

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