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デジタル庁設置へ
遺産分割について

2020年9月27日政府は、「デジタル庁設置準備室」を設置することを明らかにしました。令和7年度までに国や地方公共団体のシステム統合をめざすそうです。そんなに時間をかけることは驚きですが、掛け声倒れに終わることの多い行政改革も、システム統合ならかなりの効率化が期待できそうですね。

一方で、前回のブログで女性の自殺急増に触れましたが、女優の竹内結子さんが亡くなられました。ストロベリーナイトの姫川玲子がすきでした。まだまだこれから女優としての活躍が期待される方でしたのに、とても残念です。お悔やみ申し上げます。コロナ禍のこころの問題は、一人でかかえこまないでほしいと思います。

今回は、相続にまつわる問題の中で、遺産分割について考えてみようと思います。

目次

遺産分割とは

これまでのブログでお話しましたように、相続が開始されると財産の持ち主は死亡しますので、所有権がなくなり、相続人の所有になるわけですが、相続人が複数いる場合は、遺産共有となります。共有状態はなにかと不便ですから、これを解決するのが共有物分割といわれる手続きですが、遺産の場合ば特別に遺産分割という手続きになります。
行政書士は遺産分割協議書案作成のお手伝いができます。

宣言説が通説

民法903条で、遺産分割は、遡及効があり、相続開始時にさかのぼって効力が生じます。これはどういう意味なのかというのが、「宣言説」と「移転説」の対立です。
「宣言説」は、最初から遺産共有はなかったと宣言するのが民法903だという説です。一方「移転説」は、いったん共有したものが、単独所有へ移行するという説です。

共有物分割手続とは

共有権者が共有物の分割を求める手続きは家庭裁判所ではなく、通常の裁判所の管轄です。
民法258条では、次のように規定しています。

(裁判による共有物の分割)
第258条
1.共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2.前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

ということで、「現物分割」と「競売による金銭分割」しか、規定されていないので、見直しの議論がされています。競売では安くしか売れないかもしれないと心配する方も多いでしょうね。ただ、この規定があるおかげで、共有物の取引をする人もいるわけです。

共有物分割と遺産分割の関係

たとえば共有物に相続が発生すれば、共有物と遺産共有が併存することがあります。
この共有物の分割は、通常の共有物分割手続きによります。
そのあとで、遺産共有のところだけ、遺産分割手続きを行います。
とても、複雑な感じを受けますが、裁判所の管轄が違うのでいたしかたないですね。
第一段階の共有物分割で賠償金になっても、その賠償金が遺産分割の対象となります。


遺産分割の対象

遺産分割の対象は、「遺産分割時の相続財産」です。
「相続開始時の相続財産」では、ありません。


処分財産とみなし遺産

相続開始後、遺産分割開始前に処分された財産を「処分財産」といいます。
この処分がなされた場合に、処分した相続人と他の相続人の間で不公平になるという問題がありました。
今回の民法改正により、処分財産についても、一定の要件を満たせば、遺産分割時に存在していたものとみなすという制度ができました。これが「みなし遺産」の制度です。

(遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲)
第九百六条の二 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。
2 前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。

具体例

テキストで紹介されている例は次のようなものです。
相続人は妻と子二人X、Y。
子Xが預貯金債権1800万円を引きだした。
Xは生前に1200万円の贈与を受けていた。

妻と子Yとが同意して、906条の2の制度を適用した。
みなし相続財産は
  1800+1200=3000万円
妻相続分は1500万円  Yは 750万円
Xは    750―1200=0 超過特別受益
具体的相続分は
妻   1200万円  Y 600万円   X 0
  

同意と同意の撤回

同意が要件です。従って、処分財産の処分者が未確定でもかまいません。
同意をした時点で実体法上の効果が生じるとされています。
同意で効果が生じるため撤回はできないとされています。


みなされる財産

みなされる財産は、処分された財産です。
売買代金ではありません。
売買代金を全員の合意で遺産分割の対象とすることはできます。
もちろんこの場合には、処分財産をみなすことはできません。


代償財産

共同相続人全員の合意によって処分された遺産に属する個別財産について、判例は相続財産から逸出するとしています。代償財産については、各相続人は相続財産ではなく、固有の権利として取得することになります。

相続財産から生じた果実

相続財産から遺産分割までの間に生じた果実については、判例は、賃料債権は遺産に属さないとしています。そして、各共同相続人が相続分に応じて分割単独債権として取得するとします。
遺産分割はさかのぼるが、この賃料債権は清算すべきことになります。

遺産分割の当事者

遺産分割の当事者は、共同相続人のほか、包括受遺者、相続分の譲受人となります。
遺産分割は遺言がない場合に備える制度なので、遺言執行者ははいっていませんし、包括受遺者はいても個別の遺贈を受けた受遺者ははいっていません。
そこでさまざまな問題点が生じます。

遺言執行者がいる場合

遺言執行者がいる場合、相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることができないと規定されています。
遺産分割も妨げる行為です。
ただし、遺言執行者は遺産分割協議に参加できるというのが通説です。

当事者性が問題となる場合

1. 譲渡した者 
 相続分を譲渡した場合は、当事者の地位を失います。
 個別財産を譲渡した場合は、譲り受けた者は共有物分割を求めることができるだけです。
2. 遺言で相続分をゼロとされた相続人
 遺産分割協議の当事者となることができ、協議が整えば相続分をもらうこともできます。
3. 不在者ほか
不在者、行方不明人がいる場合は、財産管理人を選任します。
胎児がいる場合、胎児の間に遺産分割協議をした場合、910条類推適用で事後的調整をします。
4. 制限行為能力者
 成年被後見人である場合、成年後見人が参加します。
被保佐人である場合、保佐人の同意を得て参加します。
代理権付与の審判をうけていれば、保佐人が代理できます。
被補助人である場合、遺産分割に参加できます。
ただし、同意権付与の審判を受けていれば、補助人の同意が必要です。
未成年者がいる場合、親権者は利益相反行為となるので特別代理人の選任が必要です。
5. 広義の再転相続
 第一に相続について単純承認が生じているが、未分割の遺産がある状態で第二の相続が発生した場合を広義の再転相続といいます。
家庭裁判所は、第一と第二を併せて、遺産分割の審判を行います。

まずはお問合せください

デジタル庁設置準備室が設置されます。コロナ禍で自殺が社会問題化しています。その中で遺産分割の概要がおわかりいただけたと思います。遺産分割の時期、方法などは次回とします。

いずれにしましても、不安な状況が続くなかで準備が欠かせないようです。

まずはお問合せください。より良い人生のために、相続・終活のお手伝いをいたします。

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