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トランプ大統領が感染
遺産分割について

2020年10月3日トランプ大統領は入院先からビデオメッセージを送り、元気さをアピールしました。国内では、レムデシビル、デキサメタゾンに続いて、アビガンが承認される見通しとなりました。長引くコロナ禍で急に怒りっぽくなる人が増加していて、この症状は「CIAMS(シャムズ)」と命名されたそうです。

一方で、日本学術会議会員に推薦された6名が任命されなかった点が話題になりました。これが、行政手続法の処分に該当し、その基準を公表してなければ、裁判で敗訴してしまいますね。おそらく、「任命」「任命拒否」はこの処分には該当しないと政府は判断していると思われます。もとより、憲法の保障する学問の自由に結びつけるのは無理でしょう。テレビのコメンテータが勉強不足なのは今に始まったことではありませんね。

今回は、相続にまつわる問題の中で、前回に続いて遺産分割について考えてみようと思います。

目次

遺産分割の基準

民法は、906条に遺産分割の基準を示しています。もとより、相続人が全員合意して、遺産分割協議書を作成したり、被相続人が遺言を残していて、遺言のとおりに遺産を分割するなら、基準は必要ありません。
遺産分割で争いになったとき、この遺産分割基準は生きてきます。

遺産分割基準の内容

民法906条では次のように規定しています。

(遺産の分割の基準)
第九百六条 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。
非常にあいまいですね。一切の事情を考慮するということは、何も基準をしめしてないようにも読めますね。「寄与分」という制度(904条の2)ができる前は、この条文がかなり意味をもったようですね。

具体的相続分との関係

具体的相続分という比率は、決められますので、その範囲内での基準ということになります。

906条の基準に違反した場合

協議分割や調停分割では、当事者が合意しますので、この基準は意味をもちません。審判分割のときだけ、この基準に照らして違反しているのではないか、という抗告事由になりえます。「一切の事由」と法定されてるのに、審判では考慮されてない事由があると主張するわけですね。

遺産分割の時期

遺産分割はいつでも請求できるのが原則です。請求できるとは、裁判所に頼めるということです。

(遺産の分割の協議又は審判等)
第九百七条 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
3 前項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。


遺言による分割禁止

遺言で5年間を超えない期間であれば、遺産分割を禁止することができます。
遺産分割の争いを、時間で解決するつもりなのでしょうか?

(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)
第九百八条 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。

協議または調停による遺産分割禁止

遺産を構成する共有財産は、民法の共有物の一般原則に従い、5年を超えない期間であれば、分割を禁止することができます。

(共有物の分割請求)
第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。

審判による遺産分割禁止

審判では、特別の事由がある場合だけ、遺産分割禁止ができます。
遺産の範囲をめぐる争いがあるときなどが考えられます。
この争いが解決した場合は、遺産分割禁止の審判の取消しを申し立てることになります。



遺産分割の方法

遺産分割の解決方法としては、
① 協議・調停による分割
② 審判による分割
があります。
また、実行手段としては、現物分割、換価分割、代償分割、全面的価格賠償の方法による分割があります。
① 現物分割・・・相続財産の現物で分割
② 換価分割・・・相続財産を売却して、金銭で分割
③ 代償分割・・・積極財産を得る分、相続債務を負担するという分割
④ 全面的価格賠償による分割・・・相続財産を単独で得たものが価格を賠償する分割
換価しないので鑑定などが必要です。

一部の分割

民法907条2項のとおり、他の共同相続人の利益を害さない限り、一部分割は認められます。

協議分割

共同相続人は全員の協議で遺産分割をすることができます。
指定相続分と異なる協議分割も、遺言と異なる協議分割も可能です。

無効・取り消し

1. 相続人でない者が参加してされた協議・調停分割は無効となります。ただし、無効としなくてもよいという学説もあります。
2. 共同相続人の一部を除外して行われた協議分割・調停分割も無効です。
遺産分割協議のあとに認知された場合には、910条の類推適用で事後的調整を図るべきという考え方があります。

3. 民法の法律行為・意思表示の無効・取消事由がある場合は、その規定に従います。

4. 遺産分割協議のあとに分割方法を指定した遺言が発見された場合
内容によりますが、遺産分割協議を錯誤取消し(95条)とする可能性があります。

5. 遺産分割協議のあとに個別相続財産がもれていたことがわかった場合
内容によって判断が分かれ、錯誤取消となる場合もあります。

詐害行為取消権

判例によって、遺産分割協議も民法424条の財産権を目的とする法律行為であるとされていますので、詐害行為取消権の対象となります。

遺産分割協議の法定解除

遺産分割では、条件付きのような場合があり、一部の者がこの条件を守らない場合に、遺産分割協議を法定解除できるかが問題になります。
判例は否定しています。
遺産分割には遡及効があるため、その効果を否定すると混乱するからという趣旨のようです。相続人間の債権債務の問題にします。
遺産分割協議の結果、負担付贈与を認める場合、負担付贈与を法定解除することはできるとしています。

遺産分割協議の合意解除

法定解除が認めれられないのに、合意解除は判例は否定していません。不思議ですね。

遺言による遺産分割方法の指定

遺言による「遺産分割方法の指定」とは、現物分割、換価分割などの方式の指定をいいます。

特定財産承継遺言

「特定の遺産を特定の相続人に相続させる」という遺言です。
これを「遺産分割方法の指定」とみるか「特定遺贈」とみるか争いがあります。
登記原因が「相続」か「遺贈」か異なります。
農地なら「遺贈」には許可が必要となります。
判例は、「遺産分割方法の指定」であり、「特定の遺産」が当然にその相続人に移転すると解釈しています。

  民法改正では1014条2項で解決を図りました。

(特定財産に関する遺言の執行)
第千十四条 前三条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。
2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
3 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。
4 前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

すべての遺産を特定の相続人に相続させる遺言

この場合も分かれますが、判例は遺贈ではなく、遺産分割方法の指定ととらえています。

調停分割・審判分割

相続人は遺産分割の調停を家庭裁判所に申したてることができます。
調停は、合意により調停調書が作成されると、確定審判と同一の効力を持ちます。

相続人は家庭裁判所に遺産分割を請求することができます。
遺産分割の審判を申し立てると、調停前置主義ではありませんが、通常は職権で、調停に付されます。

審判分割

協議が整わないときや、調停が成立しないときに、審判分割が行われます。現物分割が原則ですが、換価分割なども行われます。

審判分割の前提問題

遺産分割では、その前提問題として、遺産の範囲や、相続資格などがあり、この審判の手続きで行ってよいのか、別途通常訴訟とすべきかが問題となります。
判例は、審判手続きのなかで、実体的権利義務を判断できるとしています。

遺産分割の効果

遺産分割は遡及効があり、相続開始にさかのぼって効果が生じるため、その例外との関係が問題となります。

(遺産の分割の効力)
第九百九条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

909条但し書きの第三者

この第三者は、遺産分割前に生じた第三者であり、善意・悪意は問いません。
例としては、個別相続財産の持分を譲渡された者、同じく担保権の設定を受けた者、同じく持分を差し押さえた者が挙げられます。
これらの者が対抗要件を備えていれば、権利が保護されます。

所有権の対抗問題

法定相続分を超える部分は、対抗要件を備える必要があります。
不動産では登記です。

(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。

債権の対抗問題

同じく899条の2で対抗問題になります。
債権では、債務者への通知か承諾が必要です。

共同相続人間の担保問題

遺産分割した相続財産が他人の所有物だったり、欠陥があったりすると、共同相続人間の担保責任の問題になり、民法では911条から913条に規定されていますが、914条で遺言が優先するとされています。

原則は、各共同相続人は、他の共同相続人に対して「売主」と同じ担保責任を負います。

債務者の資力の担保責任

ある債権を相続したが、その債務者が無資力だったりすると、担保責任が問題になります。
一般原則とは異なり、他の共同相続人が担保する規定になっています。

共同相続人の無資力者

担保責任を負うことになった共同相続人が無資力の場合もあります。
求償者と他の相続人がその分を相続分に応じて分担します。

まずはお問合せください

トランプ大統領が感染しました。国内では治療薬が承認されています。その中で遺産分割の概要がおわかりいただけたと思います。遺産分割にもさまざまな問題が発生する可能性があります。

いずれにしましても、不安な状況が続くなかで準備が欠かせないようです。

まずはお問合せください。より良い人生のために、相続・終活のお手伝いをいたします。

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