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高齢者は50年で2500万人増
遺言(第一回)について

2020年10月23日、厚労相は閣議に令和2年版厚生労働白書を報告しました。平成元年から令和22年までの約50年間で、高齢者人口は12.1%1489万人から35.3%3921万人となり、2500万人増加する予想です。

令和22年に65歳の人が90歳まで生きる確率は、男性が42%、女性が68%だそうです。いよいよ人生100年時代になりそうです。

また、「LIFE SPAN」(デビッド・A・シンクレア他著、東洋経済)によると、老化は治療できる病気だといいます。「やめる!生き方」(弘兼憲史著、青春新書インテリジェンス)では、35のやめるべき習慣が提唱されています。

コロナ禍で構造改革を迫られているANAはマイレージ活用、日航はドローン物流だそうです。コロナはコロナ太りなど便利な言い訳に使えますが、企業改革にとっても大きな追い風にもなります。あっというまに世界が変わってしまう可能性もあります。老いた身にはつらいですが、がんばらないと置いてけぼり、老いてけぼり?です。

今回は、相続にまつわる問題の中で、遺言(第一回)について考えてみようと思います。

目次

遺言とは

遺言というと、書き方がわからない、という声をよく聞くように、基本的な制度の内容からあまり知られていないのが実情です。
法律に基づくものなので、やはり親しみにくいかもしれません。
テレビドラマでは必ずいかめしい顔をした弁護士(大和田伸也さん)がでますからね。
注)大和田伸也さんは日本聖公会だそうで、私との共通点でした。
当ブログでは、
第一回で「遺言の制度概要と種類」
第二回で「各遺言種類の詳細」
第三回で「遺言の効力、撤回、検認、保管」
最終回で「遺言の執行」
というように、分けて紹介していこうと思います。

遺言の概要

遺言とは
・一定の方式に従った
・遺言者の
・死後の法律関係を定める
・最終意思の表示
です。

そして、遺言で意図した効果が法的に保障されます。
死んだあとですから、自分では実現できないですから法律的に保障するわけですね。

方式主義

遺言では、厳格な方式主義をとっています。要式行為です。
つまり、法律が定めた方式で書かないと意味がないわけです。
遺言が意味を持つときは、本人がいないから、確認のしようがありません。
そのため、厳格な方式主義で、本人の意思であることを保証するわけですね。

単独行為

遺言は単独行為です。
契約などと異なり、相手の了解はいりません。
条件付きも可能です。
停止条件付は985条2項に明記されています。
「●●という条件が実現したら、財産を譲る」というのは有効です。
一方で解除条件は問題です。
「財産を譲るが、●●という条件が実現したら、財産移転を解除する」という方法です。
不動産などでは、登記をしておかないと、こういう条件は第三者には対抗できないかもしれません。解除条件付き売買の例としては、住宅ローンが挙げられます。

共同遺言の禁止

民法では、同一の遺言で2人以上の者が遺言することを禁じています。
同時に死ぬケースは少ないわけですから、共同遺言を禁止するのも一理ありますね。
夫婦で一つの遺言書に署名するのはやめましょう。
うっかり二人で署名しても、一人分の遺言として有効かもしれませんから、専門家に相談しましょう。

遺言事項は法定

民法では遺言できる事項を限定しています。
この事項以外は、遺言に書いてもいいのですが、法的な保証は認められないことになります。
① 認知(781②)
② 未成年後見人、未成年後見監督人の指定(839,848)
③ 廃除と廃除の取り消し(893,894)
④ 祭祀に関する継承者の指定(897)
⑤ 相続分の指定、指定の委託(902)
⑥ 特別受益者のもち戻しの免除(903)
⑦ 遺産分割方法の指定、指定委託(908)
⑧ 遺産分割の禁止(908)
⑨ 相続人間の担保責任に分担(914)
⑩ 遺贈(964)
⑪ 遺言執行者の指定、指定委託(1006)
⑫ 一般財団法人の設立(一般法人152②)
⑬ 一般財団法人への出資(同164②)
⑭ 遺言信託(信託2,3,4)
⑮ 保険金受取人の変更(保険44、73)

遺言書の解釈

遺言書の内容について疑義が生じて争いとなることがあります。
最終意思を尊重することになります。
遺言書に「法的に定められた相続人」と書いた例で、嫡出子として届けられた戸籍上の子を指すのか、厳密な意味での法定相続人である弟を指すのか争われた例が紹介されています。
最高裁は、戸籍上の子を指すと判断しています。また、可能な限り有効となるよう解釈すべきともしています。

遺言能力

民法では次のように規定しています。

(遺言能力)
第九百六十一条 十五歳に達した者は、遺言をすることができる。
第九百六十二条 第五条、第九条、第十三条及び第十七条の規定は、遺言については、適用しない。
第九百六十三条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

第5条は未成年、第9条は成年被後見人、第13条は被保佐人、第17条は被補助人の規程です。これらの場合でも行為の制限がなく、遺言は有効にできることになります。

成年被後見人には特則があります。

(成年被後見人の遺言)
第九百七十三条 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
2 遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。

いずれにしましても、意思能力がない場合の遺言は無効になります。
認知症が重症化する前に遺言は作成しましょう。


遺言の種類

遺言は大きく分けて、普通方式遺言と特別方式遺言があります。
よく使われるのは、自筆証書遺言と公正証書遺言です。

普通方式遺言の3種類

① 自筆証書遺言・・・遺言者が自筆で作成します。
② 公正証書遺言・・・公証人に伝え、公証人に作成してもらいます。
③ 秘密証書遺言・・・内容を秘密で作成し、公証人などに封書を提出します。

特別方式遺言の4種類

① 死亡危急者遺言・・・死亡の危急が迫った者が証人立ち会いで作成します。
② 伝染病隔離者遺言・・・伝染病で隔絶地にある場合、警察官と証人の立ち合いで作成します。
③ 在船者遺言・・・船舶中では、船長などの立ち合いで作成します。
④ 船舶遭難者遺言・・・船舶で遭難の場合、証人の立ち合いで口頭で作成します。
いろいろな場合を想定して規定されていますね。伝染病があるのは、コロナの現代にもマッチしていて、さすがという気がしますが、船があって飛行機がないのは民法が古い時代のものだったからでしょうか?

まずはお問合せください

厚生労働白書によると平成元年から令和22年までの約50年間で、高齢者は2500万人増加する予想です。
コロナで世の中の変化が加速しています。がんばらないと老いてけぼり?です。
遺言の概要がおわかりいただけたと思います。次回以降に続きます。

いずれにしましても、不安な状況が続くなかで準備が欠かせないようです。

まずはお問合せください。より良い人生のために、相続・終活のお手伝いをいたします。

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