米大統領はバイデン氏が確実
遺言(第三回)について
2020年11月3日、アメリカ大統領選が行われ、バイデン氏が当選確実の情勢となりました。現職のトランプ大統領は敗北を認めず、訴訟を起す戦略です。困った人です。郵便投票制度はトランプ支持者も利用できたし、選挙前に郵便投票しないように制度を改定することもできたのではないでしょうか?争いをかきたて、暴動の引き金になるような態度はどうでしょうか?
誰もが今まで関心のなかった学術会議の問題を連日大問題であるかのように議論しています。日本は平和です。
本日は北海道の新型コロナ感染者が200人を超えたそうです。寒冷地の先例が、冬到来の前に全国に警鐘をならしてるようです。
今回は、相続にまつわる問題の中で、遺言(第三回)について考えてみようと思います。
目次
- ○ 遺言の第三回
- ○ 遺言の効力
- ・民法総則の無効、取消事由
- ・遺言独自の無効事由
- ・遺言の無効の主張
- ○ 遺言の効力発生時期
- ○ 遺言の撤回
- ・撤回の擬制
- ○ 検認手続きと遺言書の開封
- ・検認の手続き
- ・遺言書の開封
- ・遺言書の確認
- ○ 遺言書の保管
- ・自筆証書遺言の保管制度
- ・遺言公正証書の保管制度
- ○ まずはお問合せください
遺言の第三回
当ブログでは、遺言について
第一回で「遺言の制度概要と種類」 第二回で「各遺言種類の詳細」
第三回で「遺言の効力、撤回、検認、保管」 最終回で「遺言の執行」
というように、分けて紹介していこうと思います。
今回は第三回です。
第一回と第二回で遺言の種類を紹介しました。
第三回は、遺言の効力、撤回、検認制度、保管など、どの遺言にも特有の問題点についてです。
遺言の効力
遺言は、書いた人が亡くなられたあとに効力が問題になることがあり、その場合はもはや修正もできませんので、無効になってしまわないようにしなければなりません。
民法総則の無効、取消事由
民法総則では、無効・取消となる場合が規定されていますが、遺言には、ほとんどが適用されません。
第九百六十二条 第五条、第九条、第十三条及び第十七条の規定は、遺言については、適用しない。
以下の規定は適用されません。
第5条:未成年者の法律行為
第9条:成年被後見人の法律行為
第13条:保佐人の同意を要する行為等
第17条:補助人の同意を要する旨の審判等
遺言でも財産上の事項については、錯誤95条、詐欺・強迫96条は基本的に適用となります。身分行為については、適用されません。
たとえば、遺言で行う「認知」には適用されません。
民法90条の公序良俗違反は、遺言にも適用されます。
不倫関係にある者への遺贈を記した遺言が公序良俗違反ではないかと争われた事例があります。適用が否定されましたが、適用される可能性があることが示されています。
遺言独自の無効事由
1.遺言能力
第九百六十一条 十五歳に達した者は、遺言をすることができる。
第九百六十三条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。
963条があるので、重度の認知症になっている時点で作成された遺言は無効です。
効力が心配な場合は、下記のような対策があります。
① 主治医の診断で長谷川式簡易知能スケールで判断能力があることを示す。
② 遺言書の作成の様子を録画する。
③ 公正証書遺言で公証人に保証してもらう。
2.遺言の方式違反
これまで述べたように遺言は要式行為です。違反すると無効になります。
3.後見人に利益となる遺言
(被後見人の遺言の制限)
第九百六十六条 被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。
2 前項の規定は、直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合には、適用しない。
遺言の無効の主張
調停前置主義の対象です。まずは、遺言無効確認の調停を家庭裁判所に申し立て、その後遺言無効確認の訴えとなります。
認知症になる前に作成された遺言について、認知症になったあとに書き換えられたとして、生前に遺言無効確認の訴えができるかが争われました。訴えはできないと判示されました。
遺言の効力発生時期
遺言は遺言者の死亡により効力が発生します。遺言に書かれた内容は、死亡までは確定的な権利義務関係は発生しないとされます。
遺言事項に停止条件がついている場合は、条件成就の時からその効力が生じます。
一定の手続きを要する場合は、その手続きが済んでから、死亡時に遡って効力が生じます。
財団の財産を拠出する場合は、遺言が効力を生じた時から財産は財団に帰属します。
遺言の撤回
遺言の撤回は自由ですが、遺言の方式によらなければなりません。
(遺言の撤回)
第千二十二条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
撤回の擬制
また、撤回すると書いてなくても、撤回が擬制されることがあります。
① 遺言後に抵触する遺言(1023①)
前の遺言と後の遺言が抵触する場合は、前の遺言を撤回したものと見なされます。
② 遺言後の生前処分が抵触(1023②)
遺言の内容と抵触する生前処分がなされると、遺言は撤回されたものと見なされます。
③ 目的物の破棄(1024前段)
遺言者が故意に遺言書または遺言の目的物を破棄した場合も撤回と見なされます。
④ 一部の抵触と残り
一部の抵触は、その部分が撤回され無効となるのですが、残りの遺言はどうなるでしょうか?残りの部分も無効となるのではなく、遺言の文面から客観的に判断するとされます。
検認手続きと遺言書の開封
公正証書遺言と法務局に保管される自筆証書遺言以外の遺言には、検認の手続きが必要です。
検認は証拠保全手続きで、違反には過料5万円のが課せられます。
検認を受けなかったからといって、遺言が無効になるわけでもないし、検認を受けたからと言って、遺言は必ず有効であるとも限りません。
(遺言書の検認)
第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
検認の手続き
1. 申し立て
相続開始を知った後に、遅滞なく家庭裁判所に検認を申し立てます。
遺言書が複数みつかった場合は、全て検認を申し立てる必要があります。
2. 申立人
遺言書の保管者または保管者がいない場合は相続人です。
3. 検認期日
家庭裁判所は、検認期日を定め、申立人、相続人その他利害関係人を呼び出します。
4. 検認
家庭裁判所は、一切の事実を検認します。
5. 検認調書
家庭裁判所の書記官は、遺言検認調書を作成し、検認済みの証印を付した遺言書を申立人に返還します。
遺言書の開封
封印のある遺言書は家庭裁判所で開封しなければなりません。
検認と同じで遺言書の効力には影響ありません。
遺言書の確認
危急時遺言は確認が必要です。
こちらは、家庭裁判所の確認がなければ、効力を生じません。
(死亡の危急に迫った者の遺言)
第九百七十六条 疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。
2 口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならない。
3 第一項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができる。
4 前三項の規定によりした遺言は、遺言の日から二十日以内に、証人の一人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
5 家庭裁判所は、前項の遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。
遺言書の保管
遺言書の保管制度としては、新しくできた自筆証書遺言の保管制度と、公正証書遺言の保管制度があります。
自筆証書遺言の保管制度
今回の民法改正で自筆証書遺言の保管制度ができました。
自筆証書遺言は、費用がかからずメリットが多いのですが、遺言書の保管が曖昧なために、発見されなかったり、隠匿されたりするデメリットがありました。
そこで法務局が保管する制度ができ、この場合は検認が不要となったのです。
法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成三十年法律第七十三号)が、2020年7月10日から施行され、全国312か所の法務局において,自筆証書遺言を預かる新しい制度が開始されました。
1. 保管の申請
遺言者本人が法務局に出頭して申請します。
法務局では、電話、出頭、ホームページによる予約制度がとられています。
2. 法務局による形式的な審査
法務局職員(遺言書保管官)が遺言書の外形的な審査(全文、日付、署名の自筆、押印の有無等)を行います。内容の相談には応じず、効力を保証するものではありません。
3. 遺言書の保管
遺言書の原本を保管します。無封に限ります。画像データも併せて保存します。
4. 遺言者の権利
遺言者は原本の閲覧を請求することができます。
保管の申請を撤回して、返還、画像消去を求めることもできます。
5.遺言者以外の権利
何人も遺言書保管事実証明書を交付するよう請求することができます。
被相続人の相続人、遺言書で受遺者と記載された者、遺言書で遺言執行者として指定された者等(関係相続人等)は、閲覧を請求できます。また、関係相続人等は、遺言書情報証明書を交付することを請求できます。
遺言公正証書の保管制度
遺言公正証書は、公証役場に保管されます。公証役場は、遺言者に対し、遺言公正証書の正本・謄本を交付します。利害関係人には、閲覧請求権と謄本交付請求権があります。
20年間保管されます。
遺言書検索システムで所在を検索することができます。
まずはお問合せください
アメリカの大統領選はバイデン氏が確実なようです。学術会議を議論してる日本は平和ですね。
遺言の効力、無効・取消、撤回、検認、保管制度がおわかりいただけたと思います。
次回は遺言の執行です。
いずれにしましても、不安な状況が続くなかで準備が欠かせないようです。
まずはお問合せください。より良い人生のために、相続・終活のお手伝いをいたします。