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はやぶさ2カプセル帰還
遺留分(前半)について

2020年12月6日、探査機はやぶさ2のカプセルがオーストラリアの砂漠に着陸し、小惑星リュウグウの試料が回収されます。6年間、往復52億キロの旅でした。46億年前の太陽系ができたころの痕跡があり、生命の起源に迫る玉手箱として期待されます。探査機は別の惑星に向かったようです。ほんとうに、夢がありますね。日本の技術が成し遂げた世界初の快挙でもあり、歴史の教科書に書かれるようなニュースです。

新型コロナは、勝負の3週間ですが、英国のワクチンが8日に接種開始ということで、結果が気になります。医療現場の看護師不足に、自衛隊派遣という案があるそうです。補助金も重要ですが、こういう話をもっと進めてほしいですね。

医療費の75才以上2割負担への引き上げ問題は、年収170万円以上と240万円以上で議論されています。どうなることやら心配です。

今回は、相続にまつわる問題の中で、遺留分(前半)について考えてみようと思います。

目次

遺留分とは

相続では、遺言などで財産を譲るのですが、遺留分は相続人に対して遺産の一定の割合を取得できることを保証する制度です。
たとえば、「遺産全額を〇〇に譲る。」という遺言があっても、もらえなかった相続人はあきらめずに、遺留分を主張することができます。
一般的にはあまり知られていませんが、「遺留分」という名前が難しくしてるのかもしれません。「遺産請求権」という名前はどうでしょうか?
今回の民法改正で少し修正があったので注意が必要です。



遺留分の概要

遺言では、自由に遺産を処分できるのですが、遺留分という制限があることになります。法定相続人に一定の遺産を残すことになります。
その目的は、遺族の生活保障、遺産形成への貢献を考慮した再分配、夫婦共有財産の清算、相続人間の公平などがあげられています。
明治時代であれば、家の維持という目的が考えられますが、現代では遺族の生活保障ということが大きいかもしれませんね。

従来、この権利は「遺留分減殺請求権」と呼ばれてました。
遺留分侵害者からの現物返還が原則で、例外として価額弁償をしていました。

2018年の民法改正で、「遺留分侵害額請求権」という金銭債権となりました。

遺留分を侵害する遺贈・贈与は、無効ではなく有効な法律行為です。
これに対し、遺留分を侵害された相続人が権利を行使することができるという制度です。
実務的には「遺留分の侵害額の請求書」です。
民法改正前の従来分は「遺留分減殺請求書」です。
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(遺留分侵害額の請求)
第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
2 遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。
一 遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額
二 第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
三 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額
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遺留分の放棄

相続開始後の遺留分の放棄は自由です。請求しなければいいだけです。
実務的には「遺留分放棄書」です。
生前の遺留分の放棄は、遺言者からの強制のおそれがあるため、家庭裁判所の許可が必要です。
実務的には「遺留分放棄の許可審判申立書」です。
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(遺留分の放棄)
第千四十九条 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2 共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。
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中小企業の事業承継のために遺留分制度の特例

中小企業の社長などが、後継者に株式を遺贈した場合には、遺留分制度の例外として、株式等について,遺留分を算定するための財産の価額に算入せず、中小企業の事業承継を円滑にするものです。家庭裁判所の許可が必要です。

「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」です。
この手続を利用するためには,中小会社の旧代表者又は旧個人事業者の推定相続人(兄弟姉妹及びおい・めいを除く。)及び後継者全員で合意書面を作成し,その合意をした日から1か月以内に,後継者が経済産業大臣に対して,合意についての確認の申請を行う必要があります。後継者は,その確認を受けた日から1か月以内に,家庭裁判所にこの申立てをする必要があります。
 家庭裁判所の許可の審判が確定すると,合意の効力が生じます。
実務的には、「遺留分の算定に係る合意の許可の申立書」です。

遺留分権利者

遺留分の権利者は、兄弟姉妹以外の相続人です。
つまり、配偶者、子、直系尊属(親とその親など)です。
相続欠格者、廃除された者、相続を放棄した者には、遺留分はありません。
また、包括受遺者にもありません。
子の代襲相続人には、遺留分があります。
欠格と廃除でも代襲相続が発生しますので、遺留分が発生します。
放棄した場合は、代襲相続とならず、遺留分も発生しません。

遺留分の割合

遺留分の割合は包括的に定められています。
直系尊属のみの場合は3分の1、その他は2分の1です。
個別には、さらに法定相続の割合で分けられます。
妻と子3人だったら、包括遺留分は2分の1
個別は、妻が4分の1、各子は12分の1です。

親が二人だけだったら、包括遺留分は3分の1
各親は、6分の1です。

遺留分の算定の基礎財産

ここから少し難しいです。
簡単に相続開始時の財産総額にはならないのです。
生前にどんどん贈与されたら、遺留分の制度が意味がなくなります。
基礎財産
=①相続開始時の財産 + ②1年間の贈与財産 - ③相続債務



① 相続開始時の財産
あまり問題ありませんが、条件付き権利や存続期間が不確定の権利などは、家庭裁判所が選定した鑑定人の評価に従います。
実務的には「鑑定人の選任審判申立書」です。
遺贈はこれに含まれます。
生命保険金は被相続人が自己を受取人とする場合は相続財産を構成します。
死亡退職金は含まれません。

② 贈与財産
全ての無償処分を指す。一般財団法人への拠出、信託の設定、無償での債務免除、無償での担保供与も含まれます。
相続人への贈与に限られません。
相続開始前1年間に限られます。1年前に贈与契約があれば、履行が1年以内でも控除対象にはなりません。
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第千四十四条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。
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③ 相続債務
私法上の債務も公法上の債務も控除対象です。

まずはお問合せください

はやぶさ2のカプセルが着陸し、リュウグウの試料が回収されます。生命の起源に迫る玉手箱です。コロナの看護師不足に、自衛隊派遣案があるそうです。進めてほしいですね。

遺留分の概要についておわかりいただけたと思います。次回は遺留分の続きです。

いずれにしましても、不安な状況が続くなかで準備が欠かせないようです。

まずはお問合せください。より良い人生のために、相続・終活のお手伝いをいたします。

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