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高齢者、職場の次は若い世代
遺言の効力について(2)

2021年6月13日、65歳以上で少なくとも1回接種した人の割合は、佐賀が49.7%で最も高く、岡山と鳥取が46.8%で続いています。神奈川は30.9%。西村大臣が「職場での接種なども含めて、急ぎ検討して、現役世代も次の段階で打っていけるように考えていければと」としてるように、医療従事者、高齢者、職場、その次は若い世代とする例が出始めています。若い世代への接種に向け、いち早く動き出したのが東京・中野区で、区独自の取り組みとして、16歳以上への一般接種の案内を始めました。高齢者から接種するよりも若い人もある一定の割合入れて打った方が感染の収束が早いというシミュレーションが紹介されていました。わかる気がします。

法制度の動きとしては、憲法改正の国民投票で商業施設に投票所を設けることなどを柱とした、改正国民投票法は、参議院本会議で可決され、提出からおよそ3年を経て成立しました。官房長官が、憲法に「緊急事態条項」を新たに設けるべきかどうかについて「新型コロナによる未曽有の事態を全国民が経験し、緊急事態の備えに対する関心が高まっている。議論を提起し、進めることは絶好の契機だ」といってしまってますが、正直すぎてなんだかなあという感じです。

また、今月に入り、政府は半導体・デジタル産業戦略を発表し、梶山経産大臣は「大きな政策転換をはかりたい」として、半導体産業を国家事業と位置づけました。アメリカやヨーロッパ、日本にとっても半導体が調達できないと、非常にいろいろなものに影響します。半導体の設計はアメリカが約7割、製造は台湾が約7割のシェアを握っています。ノンデジタルの半導体を製造するパワーはまだ日本に残っています。日本は自動車や産業機械、工作機械はまだ非常に強いので、機械や自動車に使うためのアナログ半導体をどのように供給するかが鍵になるようです。時代はかわりますね。

一方、スポーツ界では、サッカーの代表戦が続くなど、五輪への準備が着々と進んでいます。年齢制限のある競技では、選手の気持ちを考えると、安全に開催できるといいですね。

今回は、遺言の効力の二回目について考えてみようと思います。

目次

遺言の効力(2)

今回は、前回に続き遺言の効力について考えます。
遺言については、明るみに出たときには本人がなくなっていて、その効力がないと無駄になってしまうので、遺言の効力をあらかじめ把握しておく必要があります。
遺言の効力については、前回は、「任せる」「相続させる」「遺贈する」「相続分を侵害する場合」「欠格者の立ち会い」「同時死亡」について考えました。

同じ日付の遺言書の優先するほうは?

同じ日付の遺言書がみつかった場合はどうなるでしょうか?日付が同じ場合は、日付以外の条件から、あとに作成されたことがわかれば、あとの遺言書が優先します。遺言書の内容やその他から判断されます。遺言は撤回が自由ですから、新しい遺言により前の遺言が撤回されたことになります。また、抵触しない内容であれば、双方ともに有効になります。先後が全く不明の場合は、矛盾する内容があればともに無効とする説と有効として金銭解決を図る説があります。

封筒に印、契印、又は指印はあるが署名下に押印がない場合は?

封筒のとじ目に印があって、遺言書本文に押印がない場合の判例があります。
平成6年6月24日
「右認定に係る事実関係の下において,遺言書本文の入れられた封筒の封じ目にされた押印をもって民法968条1項の押印の要件に欠けるところはないとした原審の判断は,正当として是認することができ,原判決に所論の違法はない。」
として、遺言書の有効性を認めています。

指印について最高裁判例があります。
平成元年2月16日
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が遺言の全文、日附及び氏名を自書した上、押印することを要するが(民法九六八条一項)、右にいう押印としては、遺言者が印章に代えて拇指その他の指頭に墨、朱肉等をつけて押捺すること(以下「指印」という。)をもって足りるものと解するのが相当である。

契印は、遺言書が複数枚になるとき、各ページにまたがって押印するものですが、契印については、指印や封筒の押印の判例があるところから、有効と解されています。

以上のように有効ではありますが、実務としては、ちゃんと押印しましょう。

押印のかわりに花押を書いた場合は?

花押(かおう)は、美しく図案化された筆文字の署名で、自らを表すものとして所有されてきた日本古来のサインです。しかし印ではなくその都度同じ形に書くものです。

平成28年6月3日最高裁判例があります。
花押を書くことは,印章による押印とは異なるから,民法968条1項の押印の要件を満たすものであると直ちにいうことはできない。
そして,民法968条1項が,自筆証書遺言の方式として,遺言の全文,日付及び氏名の自書のほかに,押印をも要するとした趣旨は,遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに,重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるところ(最高裁昭和62年(オ)第1137号平成元年2月16日第一小法廷判決・民集43巻2号45頁参照),我が国において,印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難い。
以上によれば,花押を書くことは,印章による押印と同視することはできず,民法968条1項の押印の要件を満たさないというべきである。


遺言者のあとに付記が書かれている場合は?

署名押印のあとに付記している場合があります。
たとえば、「ただし、死亡後の事」などです。
これが「加除その他の変更」にあたるかどうかの判断によります。
「加除その他の変更」にあたる場合は、厳格な方式に従わないと無効になります。

(自筆証書遺言)
第968条
1.自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2.前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全文又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3.自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

付記が該当するかどうかの判断は、遺言書がいったん成立したあとにその内容を変更するために書かれたかどうかによります。「ただし、死亡後の事」は、これに該当しないため、方式に従わなくても遺言書は有効となります。かりに成立後の変更に該当する場合も、この記載自体が無効であっても、遺言書の内容が不明となるものでなく、遺言書は有効と考えられます。

添え手で書かれた自筆証書遺言は?

例えば、脳梗塞の後遺症などで手が震えて遺言が書けない場合に、他人から手をそえてもらい自筆証書遺言を作成する場合が考えられます。
最高裁の判例は、必ずしも無効ではなく、条件を示して有効なものとして認めています。
昭和62年10月8日最高裁判決の要旨
運筆について他人の添え手による補助を受けてされた自筆証書遺言が民法九六八条一項にいう「自書」の要件を充たすためには、遺言者が証書作成時に自書能力を有し、かつ、右補助が遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされていて単に筆記を容易にするための支えを借りたにとどまるなど添え手をした他人の意思が運筆に介入した形跡のないことが筆跡のうえで判定できることを要する。

まずはお問合せください

65歳以上の接種率も上昇し、職場での接種の次は若い世代になりそうです。オリンピックは、選手の気持ちを思うと開催してほしいですね。
今回は、遺言の効力~押印などの点をおわかりいただけたと思います。
自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の作成、遺産分割協議書の作成、法定相続情報一覧図の作成、遺言信託は当事務所にお任せください。

いずれにしましても、不安な状況が続くなかで準備が欠かせないようです。

まずはお問合せください。より良い人生のために、相続・終活のお手伝いをいたします。

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