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相続法が改正されました!
改正相続法を詳しく解説


日本の家族に関する法制度は、民法第4編「親族」民法第5編「相続」に定められています。相続に関するおおもとは、この第5編に定められていることになります。

この民法第5編「相続」が大幅に改正されたのです。

今回は、この改正の概要(抜粋)について詳しく解説します。

目次

民法「相続」編とは?

民法は、私法といわれ、私人間のルールの基本なのはご存じかと思います。契約などで民法と異なる内容を取り決めることは基本的に許されていますから、内容は「任意規定」になります。ところが、家族に関する定めは、当事者がルールを変更できない「強行規定」がほとんどです。家族には、家族同士が契約を結ぶ習慣はないですから、争いをなくすためには「強行規定」で決めておくほうが実態にもあっていますね。

では、どんな内容がきめられているしょうか?

第1章 総則・・・・相続は「死亡」で開始すること等
第2章 相続人・・・・胎児のこと、子・配偶者・直系尊属・兄弟姉妹が相続人になること等
第3章 相続の効力・・・・財産に属する一切を承継すること等
第4章 相続の承認及び放棄・・・・3ヶ月以内に単純承認・限定承認・放棄をすること等
第5章 財産分離・・・・相続する対象の財産を明確に分離すること等
第6章 相続人の不存在・・・・相続財産法人とすること等
第7章 遺言・・・・遺言は一定の方式によらなければならないこと等
第8章 遺留分・・・・一定の相続人に留保される相続分の割合等

という構成になっています。けっこうなボリュームですね。
ここで、相続人、承認・放棄、遺言、遺留分などの基本原則が定められていることがわかります。

なぜ、改正されたのでしょうか?

民法の家族法は、明治時代の「家督制度」を戦後大幅に改め、個人の尊厳と両性の平等を定めたものになりました。その後も、時代とともに、少しづつ改正されてきました。現代は、少子化、高齢化とともに、事実婚や高齢者の再婚もみられるようになり、ライフスタイルの変化、家族の多様化が進んでいます。非嫡出子の相続分を半分とする民法の規定は、違憲とされました。そこで、このような背景をもとに、検討を進められてきた結果、今回の改正となったものです。主に、配偶者の保護と預金や遺言などの制度について社会情勢の変化に対応させることが行われました。

何が改正されたのでしょうか?

改正された内容を項目別にみてみましょう。

配偶者の短期居住権と配偶者居住権

◆短期居住権
これまでは、相続の結果、なくなられた方の配偶者(夫または妻)がそのままのその家に住む権利がなくなるケースがありました。

そこで、判例は「使用貸借契約」があるものと「推認」して解決していましたが、改正法で明確にしました。

相続開始から6ヶ月間または遺産分割協議などで帰属が確定する日までは無償で居住する権利を認めました。(民1037)

◆配偶者居住権
これまでは、「所有権」または「貸借契約」がないと「住む権利」はありませんでした。

そこで、これらがなくても無償で住める「配偶者居住権」という新しい権利・制度を作りました。

配偶者は、遺産分割、遺贈または死因贈与契約で「配偶者居住権」を取得した場合、無償でその建物を使用・収益することができます。(民1028)この「配偶者居住権」は登記できます。

遺産分割に関する見直し

◆持戻し免除
相続では、相続人が贈与または遺贈によって取得した財産を「特別受益」として、相続分から控除する制度になっています。相続人同士の公平を図るためです。ただし、被相続人が「持戻し免除」の意思表示をすれば控除しなくてもいいことになっています。

改正法では、婚姻期間が20年以上の夫婦で、その居住する建物または敷地について遺贈または贈与したときは、「持戻し免除の意思表示」があったものと推定することにしました。(民903④)

◆預貯金払い戻し
預貯金も相続財産ですから、遺産分割協議がまとまるか、家庭裁判所の仮処分がないと払い戻してもらえませんでした。

改正法では、家庭裁判所の判断なしで相続人が単独で預貯金を払い戻す制度を作りました。(民909の2)
限度額は150万円で、預貯金の3分の1に、法定相続割合をかけたものです。

遺言制度の見直し

◆自筆証書遺言の方式緩和
遺言は一定の方式で作成しなければなりません。厳格な方式であることによって、偽造防止・紛争防止にもなるわけです。
「自筆証書遺言」では、全文自筆でなければなりませんでした。

改正法では、要件を一部緩和し、財産目録は自筆で作成しなくても、自署押印すればいいことになりました。(民968②)

◆自筆証書遺言の保管制度新設
自筆証書遺言はいい保管方法がないのが弱点でした。

改正法では、法務局に保管を依頼することができるようになりました。
保管の有無の照会や閲覧、証明書取得などの制度も同時にできました。
「法務局における遺言書の保管等に関する法律」参照

遺留分制度の見直し

◆遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権に
遺留分を侵害された遺留分権利者が、「遺留分減殺請求権」を行使すると、物権的効果があるといわれていました。請求をうけた受贈者が金銭での弁償を選択しないと、物権的効果により「共有」になってかえって面倒なことになってしまいます。

改正法では、遺留分権利者が金銭の支払いを請求できることにしました。(民1046)
「遺留分侵害額請求権」と呼ばれます。

◆遺留分の算定方法
民法1030条では生前贈与の算入は相続開始前1年間と規定していましたが、相続人以外の第三者への贈与に適用されるものであるとされていました。

改正法では、相続人に対する生前贈与は、特別受益に該当するものであり、かつ相続開始前10年間にされたもにのに限り、遺留分算定の価額に算入すると定めました。(民1044)

相続の効力に関する見直し

◆権利の承継と対抗要件
「相続させる」という遺言の効力については、登記なくして第三者に対抗できるとされていました。この遺言があるかどうかは、第三者にはわからないので、権利関係が不安定になるおそれがありました。

改正法では、法定相続分を超える部分は、対抗要件主義を採用することとしました。(民899の2)

◆義務の承継
民法902条によれば、債務も相続分の指定に従うように見えますが、判例は、債権者との関係では、法定相続分に応じて承継するとしていました。無資力の相続人がいると債権者が困りますから。

改正法では、判例を明確にして、相続債権者は各共同相続人に対して法定相続分に応じて権利を行使することができると規定しました。(民902の2)

相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

これまでは、「寄与分」という制度がありましたが、相続人にのみ認められるものでした。

改正法では、被相続人に対して、無償で療養看護その他の労務を提供し、これにより被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした被相続人の親族は、各相続人に対して、寄与に応じた金銭の支払いを請求することができることになりました。また、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求することができます。(民1050)

いつから適用されるのでしょうか?

改正法は2019年7月1日施行されました。


例外として
自筆証書遺言の方式緩和は2019年1月13日施行。
配偶者短期居住権・配偶者居住権は2020年4月1日施行。
自筆遺言保管制度は2020年7月10日施行。

2019年6月30日までに開始した相続は旧法が適用されます。

まずはお問い合わせください

以上で民法「相続」編改正の概要の解説は終わります。
自筆証書遺言が利用しやすくなりましたね。

このほかにも改正された項目がありますが、それらについては、追って解説したいと思います。

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相続に関する新しい法制度の中で、最適な解決策を探るお手伝いをいたします。
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