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コロナは工夫の時代
欠格と廃除を考える

2020年8月2日国内のコロナ感染者は1331人となり、5日連続で1000人超えとなっています。小池都知事は酒類を提供する店の営業時間を夜10時までとする要請を行いました。
コロナのニュースもバリエーションが増えていて、避難者の疲弊、長雨、外出自粛、売り上げ明暗とあります。野菜が高くてカレーが作れないそうです。
また、書店員の選書宅配サービスが流行しているようです。とても興味深いです。コロナの中でこういう工夫がどんどん出てくるところにたくましさを感じます。世界中で同じことが起こっているわけですから、この危機を乗り越えるヒントがたくさんあるように感じます。

このような不安な中で、相続の勉強会に参加しました。今回は、そのときのテーマ、「欠格」と「廃除」について考えてみようと思います。

目次

初心に戻り相続の勉強を始めました

相続の勉強会に参加しました。
テキストは潮見佳男著弘文堂「詳解相続法」です。帯には、「事例で学べる相続法」「平成30年改正に完全対応!」「642の具体的なCASEで最新の相続法の全体像を詳説した実務にも学習にも役立つ待望のスタンダードテキスト。」とあります。中身を見ると確かにCASE中心で記述され、図解もあります。事項索引、判例索引もあり、つかいやすいといえそうです。
そのうち、今回は「欠格」と「廃除」について考えてみたいと思います。

欠格とは?

テキストによれば、法律上当然に相続資格を剥奪する制度です。

民法891条に相続人の欠格が規定されています。
(相続人の欠格事由)
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

5つの欠格事由は殺人関連と遺言関連に分類される

1. 1号と2号は殺人犯と、告訴・告発しなかった者です。
2. 3~5号は、遺言を妨げたり、強制したり、偽造・変造・破棄・隠匿した者です。

1号欠格事由で気になる「二重の故意」

テキストによると、殺人の故意と利得の故意が二重に必要だというのが通説だそうです。被相続人あるいは上位者・同位者との感情のもつれで殺害しても、相続財産上の利益を得る目的がなかったら,相続させてもいいという考え方でしょうか。
また、「刑に処せられたもの」は、有罪判決を受けたものと解釈されますが、執行猶予となり、猶予期間を経過した場合は、刑の言い渡しが効力を失うため、欠格事由とならないというのが通説だそうです。

3~5号欠格事由でも「二重の故意」

3~5号欠格事由でも二重の故意が必要というのが通説です。相続人による遺言書の破棄・隠匿行為が「相続に関して不当な利益を目的とする」ものでないときは、5号にあたらないという判例があるそうです。被相続人の意思を実現するために、押印のなかった遺言書に押印した例(5号非該当)が紹介されていました。
こういう例を見ると、判例はいい判断をしたと思いますが、最初から条文にいれろよと思ってしまいます。

行政書士としてはどうお手伝いできるでしょうか?

これらの欠格事由は、その効果は法律上当然に生じると解されているといいます。つまり、家庭裁判所の審判などはいらないということになります。しかし、ほかにもいえると思いますが、それを主張することは必要でしょう。争いになったときに、裁判所が勝手に欠格を認定してはくれないでしょう。そういう意味でこの条文とその解釈は知っておくべき知識ですね。看過したまま、遺産分割協議に欠格者がはいっていれば、あとで相続回復請求をされるかもしれません。
一般論としては、遺言書を変造したり、隠匿したりすると不利ですよというのが、教訓になるでしょう。

廃除とは?

廃除は、被相続人の意思により、家庭裁判所が推定相続人の相続資格を奪う制度です。
それでは、民法の廃除の規定をみてみましょう。
(推定相続人の廃除)
第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
(遺言による推定相続人の廃除)
第八百九十三条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
(推定相続人の廃除の取消し)
第八百九十四条 被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2 前条の規定は、推定相続人の廃除の取消しについて準用する。
(推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理)
第八百九十五条 推定相続人の廃除又はその取消しの請求があった後その審判が確定する前に相続が開始したときは、家庭裁判所は、親族、利害関係人又は検察官の請求によって、遺産の管理について必要な処分を命ずることができる。推定相続人の廃除の遺言があったときも、同様とする。
2 第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が遺産の管理人を選任した場合について準用する。

対象者は遺留分を有する推定相続人

被相続人がある相続人に財産を渡したくなければ、遺言書にそう書けばいいと思われるかもしれません。ところが、ある一定の人には遺留分(法定相続分の半分の場合が多い)という権利が認められています。(1042条)遺留分が認められているのは、配偶者、子、直系尊属です。つまり兄弟姉妹以外です。
遺言書で財産を受け取る人に対して、遺留分侵害額請求を主張できることになります。
ということで、遺留分さえ渡したくないときに利用するのが「廃除」というわけです。

廃除事由は厳格に運用

廃除できる事由は、「虐待」「重大な侮辱」「著しい非行」ですが生前廃除でも遺言廃除でも家庭裁判所の審判で決まります。法律で認められた遺留分を奪うので、厳格に運用されているようです。
判例を見ると、非行を繰り返したあげく、反社会勢力と結婚し、反対しているのに招待状にも親の名前を印刷したというのがあります。
また、遺言廃除では、「廃除」という言葉を必ずしも使わなくてもいいが、解釈は慎重に判断すべきとされます。

行政書士としてはどうお手伝いできるでしょうか?

やはり、相続させたくない相続人がいるという相談が多いのではないでしょうか?
その場合、遺言には遺留分という制限があることをご説明します。そのうえで、廃除も簡単にはできないこともご説明したほうがいいでしょう。
家庭裁判所への申し立てそのものを業務として代行することはできませんが、できる範囲でお手伝いすることになると思います。また、審判確定から10日以内に本籍地または推定相続人の所在地に推定相続人廃除届が必要です。

まずはお問合せください

コロナ禍でさまざまな工夫が生まれる時代になってきました。「欠格」と「廃除」の概要がおわかりいただけたと思います。
いずれにしましても、不安な状況が続くなかで準備が欠かせいようです。

まずはお問合せください。より良い人生のために、相続・終活のお手伝いをいたします。

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