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安倍首相が辞任表明
相続財産の共有を考える

2020年8月28日安倍首相は辞任を表明しました。24日には連続在職日数が佐藤栄作さんを超えたばかりでした。できたこととできなかったことがありますが、憲法改正や消費税増税など、取り組む方針がわかりやすかったと思います。

大坂なおみさんの棄権も話題になりましたが、新学期が始まり、コロナいじめの防止が課題だと聞きます。新しい首相には、私利私欲・党利党略でなく、次々と起こる課題に適切に対処し、未来の日本を託せる人になってほしいものです。

今回は、相続にまつわる問題の中で、「相続財産の共有」について考えてみようと思います。

目次

遺産共有は暫定的

相続は、人の死亡による財産上の権利義務の包括承継であると前回のブログでお話しました。このときに、相続人が複数いる場合は、共有になるわけです。
死亡と同時に権利義務の主体である被相続人は、権利義務の主体であることができなくなり、相続人が自動的にかつ包括的に権利義務の主体になります。このときに、相続人が複数ある場合は、「遺産共有」となるわけです。
民法の規定をみてみましょう。
(共同相続の効力)
第八百九十八条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
第八百九十九条 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
(遺産の分割の効力)
第九百九条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

遺産は、遺産分割されますが、この場合にはさかのぼって効力が生じるため、この間の共有は暫定的だといわれているのです。しかも、第三者の権利を害することができません。

ただし、被相続人の財産は4つに分けて考えることができ、全て共有なわけではありません。
1.帰属上の一身専属権は相続されません
2.相続されるが遺産共有でなく当然に相続人に分割されるもの・・・預金債権など
3.相続され遺産共有となる対象
4.被相続人の財産にみえるがそうでないもの・・・受取人指定の生命保険金など

この3がこれからのお話の対象です。

遺産共有で出てくる諸問題

共有というのは、民法の物権編で、第3節249~264条にあります。

共有というのは、たとえばマンションを夫婦名義にした場合をお考えいただくとわかりやすいです。持分が50%で登記していても、マンションの部屋はお互いにどこを使用してもいいですよね。権利は全体に及びます。でも売るときには一緒に売らないと全部を売ることはできないですよね。固定資産税も妻が半分だけ払って、あとは夫に請求してくださいという言い分は通らないでしょう。こういう権利関係が第3節に書いてあることになります。

この原則に対して、遺産共有の特殊性が出てきます。

遺産全体を相続するという意味では、相続分に応じて各相続人が共有しているというわけですが、一方で各相続財産の一つ一つに共有ということが考えられます。
しかもその持ち分に応じて債権者が差し押さえたり、持ち分を売却したりすると関係が複雑になります。
民法を勉強する人にはいい教材になりますが、ブログで書くにはちょっと複雑で迷惑に感じます。勝手に持ち分を売るなと文句を言いたくなります。
最近の不動産会社のコマ-シャルで、「共有持分を買います」というのがあります。
共有というのは、何かと不便ですから、プロにお任せくださいというわけです。

持分の処分と差し押さえ

各相続人は遺産分割前でも単独で自由に持分を処分できます。
つまり持分については所有権がありますから、その所有権をどうしようと自由だということです。不動産であれば、相続の登記をして、自分の持分を売却することもできますし、その債権者は持分を差し押さえすることもできます。
不動産会社のコマーシャルにつながります。

共有に関する規定で権利行使

1. 単独で持分権の範囲で行う
たとえば、不実の登記名義人に対して持分移転登記を請求できるのは、自分の持分だけです。

2. 保存行為を単独で行使
252条但し書きにより保存行為にあたるものは単独でできます。
第三者に対する妨害排除請求などです。

3. 管理行為は多数決
252条本文により管理行為は相続分の過半数の多数決です。
たとえば、遺産を構成する賃料債権の取り立て、現金の預金口座への預け入れなどが紹介されています。
預金は銀行が万全ではないから?保存行為ではないのですね。

4. 範囲を超えた主張は全員で
  自分の持分の範囲を超えた主張は、共有者全員で行使することが必要です。
  定期預金の解約があたるそうです。

取得時効

被相続人の占有により取得時効が完成した場合、その共同相続人の一人は自己の相続分の限度で取得時効を援用できるというのが判例のようです。
裁判所は法律で解釈しますから、こういう堅い結論になるのですね。

対抗問題

よく二重譲渡でどちらが権利を主張できるかというのが対抗問題で採り上げられます。
一般に登記が対抗要件であるというのは、登記したほうが勝ちというわけです。しかし、対抗要件というのは、第三者に主張する場合だけですので、当事者間では効力要件ではありません。
(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。

1. 法定相続分
  判例や改正民法の規定などにより、法定相続分については、登記なくしても第三者に対抗できるとされています。
  共同相続人の一人が勝手に自分単独名義にして処分した場合などが想定されています。

2. 法定相続分を超える部分
登記が必要です。

3. 不実登記
 自己の持分についてのみの一部抹消請求だけとされます。

遺産分割の手続き

共有物の分割手続きによることはできず、家庭裁判所の審判事項となります。

まずはお問合せください

歴代最長の安倍政権が終了することになり、後継選びが始まりました。その中で「相続財産の共有」の概要がおわかりいただけたと思います。登記などはきちんとしておいたほうがいいですね。とても複雑なので、次回もう一度チャレンジします。
いずれにしましても、不安な状況が続くなかで準備が欠かせないようです。

まずはお問合せください。より良い人生のために、相続・終活のお手伝いをいたします。

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