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台風10号と豪雨の教訓
相続財産の共有の続き

2020年9月6日大型の台風10号が九州を襲いました。九州豪雨を教訓に、準備から避難まで、被災地の皆様が必死に戦う姿が報道されていました。自然とたたかう人間の進歩がみてとれるようで心強いです。ホテルが満室のようです。

一方で、少年法改正を議論する法制審議会は、18才19才の厳罰化はするものの、適用年齢20才は維持する方向が示されたそうです。こういうところは、教訓に学べない人々が多いようです。日弁連というのは、けっこう世論と逆な感じをうけますね。

今回は、相続にまつわる問題の中で、「相続財産の共有」について前回に続いて考えてみようと思います。

目次

共有される遺産の管理

前回のブログでお話しましたとおり、相続人が複数いる場合は、遺産は共有になります。
このときに、関係者が複数いると誰がどうやって管理するのかという疑問が出ます。
ここはシンプルに、民法の「共有」のルールです。
① 「保存行為」単独で可
② 「保存行為の範囲を超える利用行為・改良行為」持分の過半数
③ 「処分行為」全員の合意
このように、共有というのは単独の所有権に比べてかなり不便なものです。
遺産分割を急ぎましょう。

共同相続人の一人に対する請求

法律上は共有になったからといっても、実際には残された妻と長男一家が住んでいて、他の共同相続人は、法的な共有状態にすら気づかないということもあります。

不当利得返還請求

何の権利があって100%所有権者みたいに占有してるんだということもあり得るのです。
これが占有者に対する不当利得返還請求です。
裁判では、遺産の分割などが確定するまでは「無償に使用させる旨の合意があったと推認」としています。

明け渡し請求

占有している相続人が過半数持ち分でないときに、過半数持ち分を有する者からの建物明け渡し請求の裁判例があります。判決は「当然に明け渡し請求はできない」としています。共有では少数の持ち分でも全体を使用できますからね。明け渡しは無理です。

内縁の配偶者

内縁の配偶者は法定相続人ではないので、住み続けられるかが問題です。
共同相続人から訴えられるケースと大家さんから訴えられるケースがあります。
判決は、共同相続人から訴えるケースは、内縁の配偶者と被相続人の共有を認めたうえで、遺産確定までは無償使用の合意を推認しています。大家さんからのケースは、相続人が相続した賃借権を援用するという構成があります。相続人がいない場合は、内縁の配偶者が被相続人の賃借権を承継するという構成です。

配偶者の短期居住権

前にも述べましたが(6/8)、民法改正で新しい権利が認められました。
上記のような争いが起こらないように配慮しました。
残念ですが内縁の配偶者は含まれません。

相続財産管理人

遺産分割審判または調停の申し立てがあった場合で、必要があるときは、相続財産管理人が選任されます。
仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分も認められています。

管理費用の負担

相続財産の管理に要する費用は、相続財産とは別個のものであり、遺産分割の対象ではないが、相続財産から支出する。ただし、全員の合意があれば、遺産分割の手続きで清算できる。
なんだかまわりくどいですね。
死亡後に発生する費用ですから、遺産分割の対象ではないということですね。

共有と分割

相続される個別財産で共同帰属して遺産分割するのが、ふさわしくないものがあるとされています。当然分割という考え方です。

金銭債権・・・当然分割される金銭債権

遺産の金銭債権は、民427条により、遺産分割の手続きを待たずに、当然に各共同相続人に帰属するとされます。

(分割債権及び分割債務)
第四百二十七条 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。


ただし、相続分の指定がある場合は、共同相続人間では指定相続分に応じて分割されると考えられています。

とてもややこしいですね。
法定相続分を超える金銭債権は、債務者への通知など899条の2第2項に債務者への対抗要件が定められています。
この通知なども第三者に対しては、確定日付ある証書で行う必要があります。
この金銭債権が相続分を超えて行使された場合は、他の相続人は損害賠償または不当利得返還請求することができます。

金銭債権・・・共有対象となる場合

株式、投資信託受益権などから生じる金銭債権は、遺産分割の対象となるとされます。また、個人向け国債も、分割が制限される関係で、共有対象です。
預貯金債権も遺産分割の対象です。

預貯金債権については、可分債権であるとして扱われていましたが、最大決平成28・12・19は、「相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である」として、従前の判例を変更して遺産分割の対象であると判示しました。

改正法では、家庭裁判所の判断なしで相続人が単独で預貯金を払い戻す制度を作りました。(民909の2)
限度額は150万円で、預貯金の3分の1に、法定相続割合をかけたものです。

また、預金口座の取引経過の開示請求は、預金者の権利であることから、相続人は単独で行使できるとされています。

金銭債務

可分債務は、法律上当然に分割され、各相続人に帰属します。不可分債務は、相続人の連帯債務となります。
借金は分割され、賃料債務は連帯となります。
借金はだれがどれだけ引き継ぐかが重要です。積極財産の割合と消極財産の割合が異なると、債権者に不利になる恐れがあります。そこで、指定相続分または法定相続分で承継することとされています。

金銭

金銭は遺産分割の対象です。
たまたま金銭を預かっている相続人に対し、他の相続人が自分の割合分を交付請求した事案に対し、遺産分割前に交付請求できないという判例が紹介されています。

遺産確認の訴え

財産が遺産分割対象の遺産に属するかどうかの裁判は、家庭裁判所ではなく、通常裁判所とされています。遺産分割の前提問題だからだそうです。

まずはお問合せください

台風10号では九州豪雨が教訓となりました。
今回は「相続財産の共有」の概要がおわかりいただけたと思います。
預貯金債権の相続はとても気になるところですね。
いずれにしましても、不安な状況が続くなかで準備が欠かせないようです。

まずはお問合せください。より良い人生のために、相続・終活のお手伝いをいたします。

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