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敬老の日の行事は中止相次ぐ
寄与分ほか

2020年9月21日は敬老の日でしたが、関連イベントの中止が相次ぎました。コロナによる国内死者の9割以上が60才以上で、80才以上の死亡率は十数%だそうですから、いたしかたないですね。20日総務省発表では、65才以上の高齢者は3617万人で、過去最多を更新しました。団塊世代は全員が70代に突入です。諸先輩をみていると、まだまだお元気です。4連休の人出増は心配ですね。

一方で、産経新聞によると、女性の自殺者が8月急増だそうです。悩み事は相談してみることをおすすめします。つらい時期を乗り越えれば、きっといいことがあります。死ぬのはもったいない。

今回は、相続にまつわる問題の中で、前回に続いて「相続分の確定」のうち寄与分ほかについて考えてみようと思います。

目次

相続分の確定と寄与分

相続分には「指定相続分」と「法定相続分」があり、ここから「具体的相続分」を確定させるための修正点が、「特別受益」と「寄与分」です。前回は「特別受益」までお話しましたので、今回は「寄与分」ほかのお話です。「特別受益」はマイナスする修正、「寄与分」はプラスする修正になります。なお、紛らわしいですが、新しく民法1050条で認められた「特別寄与料」の制度は、相続人以外の者が対象ですので、異なる制度です。

寄与分とは

寄与分とは、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者に与えられる持分のことです。
「労務提供型」「財産出資型」「療養看護型」「扶養型」「財産管理型」などがあります。
親の面倒を最後までみたのは、兄弟のうち一人だったら、寄与分を主張できますね。
民法904条の2では、次のように具体的な言葉で規定しています。

(寄与分)
第九百四条の二 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4 第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があった場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる

寄与分の主張

寄与分は自分で主張することが必要です。
もめたときは、家庭裁判所が、寄与の時期、方法・程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、裁量的に定めることになります。
この場合、「遺産分割調停申立書」とともに「寄与分を定める調停申立書」を提出します。
実務では、1割程度しか認められないそうです。証拠がそろわないのでしょうか?
不思議ですね。
遺言事項ではないので、遺言に書いてあっても「寄与分」としては意味がなく、相続分の指定として解釈できるものなら意味があります。そう言う意味では、被相続人に「相続分」を多めにもらえるよう「遺言」を書いてもらうのが確実ですね。

寄与分と遺贈・相続債務

寄与分は、遺産から遺贈を控除した残額を超えることはできません。
また、相続債務は各相続人が法定相続分に応じて分割承継することになり、遺言や遺産分割協議がない場合でも自動的に分割されるため、寄与分は意味をもたないとされます。

具体的相続分の確定

妻、子A,B,Cで2億円2000万を相続するとします。
子Aは4,000万の贈与、妻は遺言で2000万の遺贈とします。
子Bは2000万の寄与分がみとめられるとします。

みなし相続財産は 22,000+贈与4,000-寄与分2,000=24,000
2億4000万です。
ここから計算すると 
 妻は 24,000×1/2=12,000
A 24,000×1/6= 4,000
B 24,000×1/6= 4,000
C 24,000×1/6= 4,000

特別受益を控除し、寄与分を加算します。
 A 4,000-4,000=0
B 4,000+2,000=6,000
妻 12,000-2,000=10,000

遺産から遺贈を分けます
  22,000-2,000=20,000

具体的相続分は(20,000の分割)
 妻:A : B : C=10,000 : 0 : 6,000 : 4,000=5 : 0 : 4 : 2

寄与分の条件そのほか

1. 特別に寄与
 「特別」な寄与でなければならず、療養看護型・扶養型では、要扶養状態でなければなりません。要介護2以上という説もあります。
2. 無償性
寄与行為に対して、対価や報酬をうけていないことも条件になります。
3.相続財産の維持・増加
 相続財産の維持・増加と無関係な寄与は対象とならない。たとえば精神的な支援などは典型的に対象外となります。

相続人の寄与かどうか

相続人以外は民法940条の2の対象ではなく、民法1050条の対象となるかどうかになります。
包括受遺者には、寄与分はありません。
代襲相続の場合は、被相続人に対して、A被代襲者が寄与したケースとB代襲者が寄与したケースが問題となります。
  被相続人―被代襲者―代襲者
A被代襲者の寄与分は考慮されるが、代襲原因が被代襲者の死亡ではなく、相続欠格・廃除の場合は認めない説が有力です。
B代襲者も相続人であり、代襲者の寄与は認められます。

寄与と遺留分や他の民法上の権利

寄与分といえど、遺留分は侵害できないと解されています。
裁判所が考える一切の事情に含まれます。

また、療養介護の例でいえば、委任契約に基づく報酬請求権の成立の余地があるとされていて、二重取りでない限り、他の制度を妨げるものではありません。

相続分の譲渡ほか

民法905条には、取戻権が規定されていて、これは、遺産分割前に相続分の譲渡ができることを前提にしています。

(相続分の取戻権)
第九百五条 共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
2 前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。

相続分の譲渡とは

相続部分の譲渡とは、積極財産と消極財産を包含した遺産全体に対する割合的な持分つまり「包括的持分」の譲渡です。
でもって、個々の財産の共有持分の譲渡ではないのだそうです。
いやあ、難しい!!
そんなものを売ったり買ったりする意味があるのでしょうか?
共同相続人同士で行って、相続放棄のような効果を生じさせる例が紹介されていました。それなら、あり得る話ですね。
もちろん、相続人以外にも譲渡でき、その場合、譲り受け人は、遺産分割手続きに参加できることになります。家族の話し合いに第三者がはいることになるのはいい迷惑ですね。
実務的には、取戻権もあることから、「相続分譲渡通知書」が推奨されています。

相続分の取戻し

ということで、他の共同相続人には、取戻権が認められていて、価額と費用を償還すればいいことになっています。
形成権という権利で、意思表示で成立します。
家族共同体を守る趣旨ということで、共同相続人が譲り受け人のば場合には、認められません。
実務的には、1ヶ月以内に「相続分取戻権行使通知書」で行います。

相続分の放棄

相続の法規(民法939条)とは別に、相続分の放棄も可能です。
民法には特別な規定がありませんので、放棄された相続分は、一般原則の255条に従い、他の相続人の各自の相続分に従い、分配されます。
相続債務はこのやりかたで逃れることはできません。

特定財産上の持分の譲渡

遺産に属する特定財産上の持分も譲渡できます。この場合、共有の一般原則に従い、相続分の譲渡や遺産分割の規律は適用されません。
共有物の場合には、共有物分割請求権の対象となりますが、譲渡されなかった残余分はなお遺産分割の対象となります。

まずはお問合せください

4連休の中で敬老の日のイベントは中止が相次ぎました。その中で「相続分の確定」のなかでも、寄与分の概要がおわかりいただけたと思います。

いずれにしましても、不安な状況が続くなかで準備が欠かせないようです。

まずはお問合せください。より良い人生のために、相続・終活のお手伝いをいたします。

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