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ノーベル平和賞は世界食糧計画
配偶者の居住権について

2020年10月9日ノルウェーのノーベル賞委員会は、飢餓との闘いと紛争地域での平和活動をたたえ、ノーベル平和賞を、国連の世界食糧計画(WFP)に授与すると発表しました。今流行の自国第一主義を牽制する意味もあるそうです。報道の自由に取り組む国際的なNPOやコロナ対応のWHO、環境活動家グレタ・トゥンベリさんやトランプ大統領も候補だったそうですが、いい選択ではないでしょうか。

日本学術会議会員の問題は、前例を打破する政府の姿勢には好感がもてますが、学者相手に戦うなら法論理構築が甘かったと思います。大阪都構想の投票は,勝つまでジャンケンと批判されてますが、果たして結果は?

新聞の書評欄で尼神インター誠子の「Bあなたのおかげで今の私があります」が紹介されていました。「乳首選択ばさみ」をみた祖母が心配して電話をくれたエピソードが面白かったです。CGだといいわけしたそうです。誠子はB(ブス)から「美」へ路線変更の疑惑(笑)がありますが、それはおいといて家族はいいものですね。

今回は、相続にまつわる問題の中で、配偶者の居住権について考えてみようと思います。

目次

配偶者の居住権の保護

相続が開始すると遺産分割が行われます。このときに、残された配偶者が住み慣れた家に住む見続けることができなくなるケースが問題となっていました。
そこで、民法改正で、新しい制度が導入されました。


配偶者居住権の保護が必要な理由

被相続人名義の不動産に,名義者でない場合でも配偶者が住めるのはなぜでしょうか?
居住建物が被相続人の名義の場合、配偶者は所有権がありませんから、生前は被相続人の占有を補助する占有補助者ということになります。
被相続人が死亡すると、この占有補助者としての資格を失うことになります。
もちろん、遺産分割が円満におこなわれれば問題ありませんが、争いが生じたときに無権利者ではないかということになります。
また、婚外子の相続分が平等に改正されたのも一因と解説されています。一緒にすんでない子供の相続分が増えると、遺産分割で,換価したりする必要性もありそうです。

改正前の判例

判例(最高裁平成8.12.17判決)は、相続人の一人が、被相続人の許諾を得て被相続人所有の建物に同居していた場合には、特段の事情がない限り、被相続人とその相続人との間で、相続開始時を始期とし、遺産分割時を終期とする使用貸借契約が成立していたものと推認されると判示しました。
遺産分割までの間は、とりあえず無償で住んでていいよということです。

新しい制度は二種類の配偶者居住権

そこで民法は二種類の配偶者居住権を制定しました。
令和2年4月1日以降に発生する相続で適用されます。
配偶者短期居住権(1037~1041条)
配偶者居住権(1028~1036条)

配偶者短期居住権

民法では次のように規定されています。

(配偶者短期居住権)
第千三十七条 配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。
一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合 遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日
二 前号に掲げる場合以外の場合 第三項の申入れの日から六箇月を経過する日
2 前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。
3 居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。

1号短期居住権の内容

民法1037条1項の配偶者短期居住権の内容は以下のとおりです。
対象者:被相続人の配偶者
条件:①居住建物について共同相続人間で遺産の分割をすべき場合
   ②被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合
内容:無償で使用する権利
期間:遺産分割で居住建物の帰属が確定する日か
   相続開始から6ヶ月を経過する日
   のいずれか遅い日まで

ということは最低でも6ヶ月は住むことができます。

1号短期居住権の配偶者とならない者

但し書きにより、民法1028条の配偶者居住権を取得する者、民法891条の欠格事由に該当する者、廃除された者は配偶者短期居住権を取得できません。
また、内縁の配偶者、事実婚、パートナーについては、この規定ができる前の判例を適用し、使用貸借の推定で保護する可能性が考えられます。

1号短期居住権の効力制限と第三者対抗力

配偶者の短期居住権は使用貸借に類似する権利でありますが、たとえば配偶者以外の第三者に使用させるには、他の相続人全員の同意が必要ですし、短期居住権そのものの譲渡もできません。また、第三者対抗力もありません。




2号短期居住権の内容

民法1037条2項の配偶者短期居住権の内容は以下のとおりです。
対象者:被相続人の配偶者
条件:①居住建物について共同相続人間で遺産の分割をすべき場合以外の場合
   ②被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合
内容:無償で使用する権利
期間:相続、遺贈、死因贈与で所有権を取得した者が短期居住権の消滅を申し入れた日から6ヶ月を経過する日まで

配偶者居住権

民法では次のように規定されています。
(配偶者居住権)
第千二十八条 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
3 第九百三条第四項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。
注)903条4項は婚姻期間20年以上の場合の持戻し免除の推定

配偶者居住権の内容

民法1028条の配偶者居住権の内容は以下のとおりです。
対象者:被相続人の配偶者
条件:①遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
    または配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
   ②被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合
   ③被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していないこと
内容:建物全部について無償で使用及び収益する権利(短期と異なり収益が加わります)
期間:自由に定めることができる(定めがないときは配偶者の終身)

配偶者居住権と他の相続財産との関係

配偶者居住権を財産的価値としてとらえ、その財産的価値を配偶者が相続するという考え方になります。従って、相続分からこの財産的価値を控除した残額があれば、他の相続財産を相続することも可能です。

妻Wと子Xが建物(2000万の価値)と預貯金3000万を相続する場合

1, 配偶者居住権がない時代の遺産分割例
 W  建物所有権(2000万)と預貯金500万(住めるが生活費は少ない)
 X  預貯金2500万
2, 配偶者居住権を活用した例
 W  配偶者居住権(1000万の価値)と預貯金1500万(住めるし生活費もある)
 X  配偶者居住負担付き建物所有権(1000万の価値)と預貯金1500万

なお、これはわかりやすく解説した事例ですので、このようにうまくいくとは限りません。実際には、負担付き建物の価値をライプニッツ係数で計算することになります。
その意味で配偶者居住権の存続期間により価値が異なります。

配偶者居住権が成立しない場合

居住建物が配偶者以外の者と被相続人の共有だった場合は、成立しません。
居住建物が配偶者と被相続人の共有だった場合は、成立します。
賃貸借の場合も成立しません。
賃貸借では、賃借権を他の共同相続人とともに相続することになります。

配偶者居住権の効力

配偶者居住権は譲渡できません。
また、居住建物の所有者の承諾を得なければ、第三者に転貸できません。

審判による配偶者居住権

民法では次のように規定されています。

(審判による配偶者居住権の取得)
第千二十九条 遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができる。
一 共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき。
二 配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(前号に掲げる場合を除く。)。

遺産分割の審判では、配偶者居住権が当然に認められるというわけではなさそうです。

配偶者居住権と登記

配偶者居住権は、賃借権類似の債権というべき性質をもちますが、登記することが可能であり、物権を取得した者その他の第三者に対抗力をもちます。
配偶者短期居住権は、賃貸借でなく使用貸借類似の債権でしたし、登記もできませんので、ずいぶん違いますね。

(配偶者居住権の登記等)
第千三十一条 居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。
2 第六百五条の規定は配偶者居住権について、第六百五条の四の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合について準用する。

配偶者居住権の消滅事由

消滅事由は次のとおりです。
① 存続期間の満了
② 配偶者の死亡
③ 居住建物の全部消失
④ 居住建物が配偶者の所有となった場合
⑤ 配偶者居住権の放棄
⑥ 配偶者の用法違反などを理由として、所有権者が消滅請求をした場合

まずはお問合せください

ノーベル賞が続々と決まっています。国内では日本学術会議の任命問題で大騒ぎです。その中で配偶者居住権の概要がおわかりいただけたと思います。新しい制度ですので、これから実務に関する運用事例がでるかもしれません。

いずれにしましても、不安な状況が続くなかで準備が欠かせないようです。

まずはお問合せください。より良い人生のために、相続・終活のお手伝いをいたします。

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